第655話 ミルシュ

「あったり〜! ママ! ミルシュだよ!」


 白髪の少女はそう言いながらにこやかな笑顔を見せてくる。


(まじか...)


 私はそう思いながらも取り敢えず彼女に布を羽織らせました。


(流石に人間の姿で裸だとまずいし、村に着くまで布切れで我慢して貰おうか)


 彼女に布切れを羽織らせた後でようやくミカにツッコミを入れられた。


「いやいやいや、なに普通に当ててるんですか? こんなの何時間考えても普通なら分かりませんよね? もしかしてアレですか? 私に対する新手のドッキリですか?」


「悪いな、もう気づいていると思うけど私は普通じゃないんだ」


 その言葉にミカは言葉を詰まらせる。


「...確かにこんな短期間に私のレベルが700台にまで上がったのは異常ですけど、それだけで師匠をおかしい人だとは思いませんよ」


「ミカ...」


 私とミカのやりとりを見ていたミルシュがそっと私の手に触れてくる。


「ミカ! ママを独り占めしないでね!」


 ギュッと私の手を掴むミルシュを見て「はいはい」と答えるミカ。


「とりあえずどうしますか? トカゲだったミルシュが人間の姿になった理由は知りませんけど、取り敢えず旅用の服は買い足した方がいいですよね?」


「そうだね、この近くに村はなさそうだし、一気に駆け抜けようか!」


 私はそう呟くとミルシュを背中に背負いました。


「おおっ!?」


「ミルシュ、しっかりと掴まっておくんだよ?」


「うん! ママ!」


 ミルシュの元気な声を聞いた私は一気に走り出すのでした。

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