第627話 【何も求めない医師】⑥

 私のアドバイスを聞いてからのペリアは少しだけ変わった気がする...。


 あれからもミカを使った新薬の最終調整は行われていたが、診察に来てくれる人たち1人1人に真心を込めて接する様になったと思える。


「では次の患者を...」


 毎日やってくる患者達に自家製の薬を渡して治していく彼女の姿はやはり立派だと思う私がそこにいました。


(...ペリアを疑っていた私の方がマヌケだったのかもね)


 自分でもそう思い始める程に、ペリアという女性からは裏表があまりない様に感じられる。


 治療も的確だし薬の開発にも常に研究を欠かさない彼女の姿はまさしく【医師】であると私は断言しよう。


 そしてついにミカを実験動物とした新薬が完成した。


「ありがとうね、君たちのおかげで新薬が早く完成したよ」


 そう呟く彼女の顔にはとびっきりの笑顔がありました。


「そうだ! お礼の一万ゴールドを渡さないとね!」


 そう言いながら彼女は私達に1万ゴールドを渡してくる。


「これだけ日数をかけて1万ゴールドしか儲からないなんて...」


 そうミカは不満を漏らしているが、私は充分な収穫を得たと思っている。


「まあ、そう言うな」


 私はミカの頭をポンっと叩いて報酬を受け取りました。


「...ケロナ」


「何ペリア?」


「健康的な肉体の提供をありがとう...、そして...、


「はっ?」


 いきなり謝られても意味がわからないと私が呟こうとした瞬間!


「ッ!!」


 私はミカを庇う様に水の壁を展開し何かから身を守るのでした。

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