第720話 【無音の森】

 私はアポロに言われた通り【無音の森】にへと足を踏み入れました。


「なんだかきみの悪い森だね...」


 そう思わずにはいられないほど静かな森なのだ。


 無音の名を冠するにふさわしいほどの静けさである。


 まるで自分以外の生き物自体がこの世界にまるで存在していないかのような感覚さえ覚えてしまうほどに。


 何もない森の中を抜けてアポロの待つ場所に向かう。


 一応【帝王】達に怪しまれないように別々の場所に転送してもらい、この森の中で落ち合う事にしている。


 そしてアポロの待つ場所に向かうと一軒の森小屋が見えてきた。


 こんな何もない場所にポツンと一軒だけ森小屋がある事自体が不可解極まりない。


 近くには町も村もないし、なんなら食べられそうな野草や木の実も見当たらないからだ。


 しかも一軒屋の近くでさえ整備されている気配は全くなく、かなり経年劣化が見られる。


 どう見ても人が住める場所ではない家の戸を開き中に入ってみると。


「やっときたかい」


 中がボロボロの椅子に座るアポロの姿があった。


 私は彼にこう問いかけます。


「なんでこんな所に呼び出したの?」


「ああ、


「どう言う事? 貴方の主人は【炎帝】でしょ? それともその【炎帝】がここにきているとでも言うの?」


 私の索敵にそこまで強力な存在は探知できていません。


 仮にも【帝王】達の一員であるのならばそれなりの戦闘力を保有しているはずなので見逃すはずがないのです。


 意味深な彼の言葉に警戒していた私ですが、次の瞬間に外に大量の気配を感じてしまい動揺する。


「まさか! 貴方! 私をはめたんじゃ!」


 その言葉にニヤリとした笑みを浮かべる彼の表情に焦りを隠せない私なのでした。

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