第292話 感謝

 〜1日後〜


 私達が旅の準備を進めていると、レイナが声をかけてきました。


「あの子...、プラルさんでしたっけ? 結局あの後私達には会いにきませんでしたね」


「ええ、でも全ては彼女が決める事だよ、ここに残ってホビット族の復興を担うのも一つの手だしね」


「ですが...、こんな辺鄙へんぴな場所に誰か来てくれるでしょうか?」


 ...。


 レイナのいう通り1人で里を復興させるのはとても厳しいと言えるだろう。


 お金を使えばしばらくの間は活性化するかもしれないが、そもそもこんな場所に好き好んで永住しようと言う人は少ないだろう。


 報酬を支払なくなれば終わりだし、そもそも焼き払われた後の現状を見る限り、この里にはもう金すらなさそうである。


「こんな状態で1人置いていかれると言うのはやはり...」


 それ以上の言葉は慎む彼女でしたが、正直に言いましょう。


「まあ...って言っているようなもんだよね...、女1人だけで生きていくにあたってこの場所は少し不便すぎるし...」


「ですよね...」


 そう言いながらも足取りを止めないで里の外の方に向かう途中に彼女は立っていました。


「...」


 彼女は黙って私の方に近づいてくると、いきなり跪いたので驚く私。


 頭を下げてから彼女はこう言いました。


「昨日は答えを返せずすみませんでした、私も皆様と一緒に旅をさせてください...、私以外にこの様な目に合っている子達がいると言うのであれば、私にはその子達を救う使命があります!」


 突然そんな事を言われたので焦ってしまうが、結果だけを見ると彼女が旅のメンバーに加わるだけの話である。


 私も彼女の視線に合わせるように膝を着いてこう言いました。


「うん! これからよろしくな! プラル」

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