第3話 王都からの勇者派遣
〜辺境の漁村・スラナ〜
今私はここにいる。
なんでこの村に私は今いるのかと言うと、前回の話でこの村の近くの浜辺に流されていたと言えば理解できるだろう。
「ケロナ姉ちゃん!」
と明るく私に抱きついてくる影があった。
私はその子を受け止めて軽く笑う。
「おっと、急に抱きつかないでよサラ」
「えへへ〜」
今ではすっかりにこやかな笑顔を見せてくれる様に回復したが、数ヶ月前のあの日だけはこの明るい笑顔が消えていたと村人達は言う...。
数ヶ月前の嵐の日。
サラの両親はその時沖に出て漁をしていた。
その日は波も穏やかで漁がしやすいと言われていたので、皆がこぞって魚捕りにいそしんでいると、突然雲行きが怪しくなり沖に出ていた船がほぼ全て沈没してしまったのだ。
中には生き残った者もいるらしいがそれは極少数であり、サラの両親は帰らぬ人となったらしい。
私がなぜこの場所で彼女の面倒を見ているのかと言うと、彼女が嵐のあった次の日に打ち上げられていた私を見つけて村に連れて行ってくれたおかげで助かったからである。
私から言えばサラは命の恩人なのだ。
私の体は発見当初、全身がボロボロで彼女に見つけられた時には裂傷8箇所火傷5箇所骨折2箇所だったらしいのだが、凄い回復力で1ヶ月ほど寝れば全て良くなった。
まあ、村にあった貴重な薬を惜しげもなく使ってくれた村医者のお陰でもあるのだが、なによりもサラに見つけられていなかったらそのまま死んでいた可能性の方が高いのだ。
だから私は彼女に感謝してるし、このスラナ村の雰囲気も気に入っている。
見ず知らずの打ち上げられただけのよそ者である私を薬まで使って助けてくれた事は感謝してもしきれないくらいだ。
そう思うとニヤニヤが止まらない。
今も村の為に一生懸命働いているこの時間が凄く嬉しいからね。
薬の原料となる山菜を積み終えた私達は一緒に山を降りていく。
そんな中サラが言葉をだした。
「ねぇケロナお姉ちゃん、
サラのその言葉に私は苦虫を潰した様な表情で答える。
「ごめん...、ケロナって言う名前以外何も思い出せない...」
そんな私の表情を見た彼女が必死になって明るく振る舞ってくれる。
「いや...ううん!! いいって!、無理して思いださなくても!、私ケロナ姉ちゃんと一緒いられて本当に良かったと思ってるから!」
ニコニコと見せるサラの笑顔は本当に可愛らしい...。
この笑顔を守る為に私は今日も元気に山菜を採り村の役に立つのだと自分に言い聞かせる。
そういう話をしていると、妹の口からこんな言葉が飛び出してきた。
「そういえば...、今日だったよね
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