第198話 上陸③

「「うう〜ん...」」


 2人が目覚めるのを確認した私はすぐさま朝食...もとい朝食用の桃を用意した。


「はいはい2人とも、早速朝ごはんにしましょうか」


 綺麗に盛り付けた皿を2人の前に出す私。


「ケロナお姉ちゃん?」


「ケロナお姉様?」


「はいはいはい、取り敢えずこの果物を食べてみて」


 私の出した桃を2人とも口に含む。


 もにゅもにゅもにゅ...。


「「んっ」」


「美味しい!」


「美味しいですわ!」


 やはり子供舌にこの味は効果抜群なようだ。


 トロリと舌でとろける柔らかさに甘すぎる程の糖度。


 この二つが合わさればどんな子供でも今の2人のような笑顔になってしまうだろう。


 私の用意した桃を楽しみながら食べていた2人でしたが...。


 急にハッとしたように私の方をみてすごい形相を浮かべてきました。


「ケロナお姉ちゃん! 私達さっき早すぎって言ったよね!? 次からはもうちょっとゆっくり走ってよ! 」


「そうですよ! 私達ちゃんと言いましたし何度も叫びました! どうして止めてくれなかったんですか!?」


 2人の凄い迫力に気圧される私でしたが、すぐさま機転をきかせこの窮地を乗り切ります。


「2人とも気がついていないだろうけど、実はあの海域に大王イカよりも大きいクジラがいたんだよ、だからスピードを出してさっさとあの海域を抜け出したかったって訳」


 苦しい言い訳かもしれないが、まだ現実味のある言い訳だろう。


 2人とも最初は考えていましたが、次第に信じてくれました。


「そうだよね...、そうじゃないとお姉ちゃんが私の話を無視するなんてありえないし...」


「そうですわね、ケロナお姉様にはケロナお姉様なりの考えがあっての行動だったという訳ですね」


 2人とも子供だからちょろい。


 適当な嘘でも簡単に騙せてしまう。


 本当は私がただその時の気分で早く走らせたかっただけだと言うのにね...。


 まあ、朝食も用意してあげた事だし本当の事は黙っておいてもいいよね?。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る