第174話 【シュライン】での日々②

「お姉ちゃん! それディールから貰った剣だよね!?」


 すごい剣幕で私に言いよってくるサラに私は驚きました。


「そうだけど...、なに?」


「それはお姉ちゃんがディールから貰った大切な剣だ! それをエリーゼにあげるのはなんか嫌!」


 そう叫ぶ妹を見て察してしまう私。


 妹からしてみれば死線を共にくぐり抜けてきたディール達から貰った物を他人に譲る私の気がしれないと言った所なのでしょう。


 しかし、私は剣を使わないし、このままではせっかく貰った良い道具を使わないままアイテム袋にしまい続けてしまうと思います。


 端的に言えば良い道具という物は使われてこそ真の価値を発揮する物なのだと思う私と、他人から貰った物は大切にしないといけないというサラの考え方が今ぶつかり合っているのである。


 その事が分かった私は微笑みながら静かにこう呟きました。


「サラの言いたい事は分かる、けどお姉ちゃんの言うことも聞いてほしい」


 むすっとした表情のまま私の事を見つけめてくる妹に私はそう答えます。


「サラ、私が剣士じゃない事は知っているよね?」


「...うん」


 妹は静かに頷く。


「だったらさ、ディールから貰ったこの剣が可哀想に見えない?」


「剣が...可哀想に?」


「そう、本来の用途で使われず朽ちていくなんて本当に勿体ないしこの剣も本望ではないと思うんだ、だったらエリーゼに使って貰って剣としての仕事を全うさせてあげたくならない?」


「剣としての仕事...」


 彼女はしばらくの間私の剣をじ〜っと見つめる。


 そしてこう呟いた。


「うん...、ケロナお姉ちゃんのいう通りなんだか可哀想に見えてきた...、エリーゼ! この剣を大切に使ってね!」


 私と一緒にエリーゼにディールの剣を手渡す妹。


 ディールの剣と私達のただならぬ関係を察したのか、先ほどよりも引き締まった顔で剣を丁寧に受け取るエリーゼ。


「はいっ...! 大切にします!」


 そう力強く答えながら剣を受け取った彼女の表情は、非常に凛々しいものになっているのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る