第173話 【シュライン】での日々

 〜あれから約1週間〜


 基本的に【シュライン】での私達の日々はこうだった。


 朝起きたら朝食だけ頂いて夜までダンジョンの攻略を行う。


 シンプルにこれだけである。


 昼食はダンジョン内で狩った魔物の肉やダンジョン内に生えている植物を食べて飢えを凌ぐ。


 食料もダンジョン外から持ち込めばいいだけなんだけど、エリーゼがダンジョン内ではどうやって食料を調達するのか経験してみたいと言い出したのでこう言う手順になった。


 最初の方は魔物肉の独特な臭みに食が進まない彼女だったが、日にちを重ねるごとに慣れてきたのか普通に食せるようになってきた。


(最初はお嬢様だからダンジョン内で取れる食料なんて絶対に食べられないと思っていたけど、結構やるじゃない)


 お嬢様だと思えば思うほどエリーゼには冒険者としての素質が高いと思えてならない。


 今まで温室で育てられていたであろう彼女は、今では高レベルの魔物を見ても臆せずに剣を振り切る事ができるようになっていた。


 彼女が再び魔物を討伐すると私は声をあげる。


「よしっ、解体が終わったら昼食にしよう」


「はいっ! ケロナお姉様!」


 彼女が魔物の死骸を踏みつけながら降りてくるといつものようの剣を【重水】で洗ってあげるのだが...。


「あれっ? エリーゼその剣...、刃こぼれしてきてない?」


 彼女の剣が刃こぼれし始めている事に気がつく私。


「えっ? この剣は100万ゴールドする名剣なんですよ?」


 と彼女は言っていたが手に取ってまじまじとその剣の質感を見てみると...。


「えっ? 何この剣...」


 私は思わず顔をしかめてしまった。


 というのも装飾が豪華なだけで剣としての性能は私が【クレイトン】でディールから貰った剣の方がよっぽど実用性能が高いと思ったからである。


 私はため息を吐きながらアイテム袋からディールの剣を出した。


「エリーゼ、今あなたが使っている剣と私が今出した剣、どっちの方が剣としての性能に優れていると思う?」


 私の問いに彼女はディールの剣を指さした。


「何故でしょうか? そちらの方が安物に見えますのに、剣としての完成度が高いように見えます...」


 彼女が不思議がるのも無理はない。


 基本的にいい武器ほど値が張る物だからね。


 けど今の彼女の武器は完全に観賞用で武器として使用する物ではないと言えるだろう。


「エリーゼ、これからはこっちの剣を使ってみて」


「は...はい分かりました」


 私が彼女にディールから貰った剣を渡そうとすると、サラが割りこんでくるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る