第445話 彼女の夢

 【ニワタカの卵】を食した後で私と彼女は空を見上げて話し合っていました。


(でも本当にお姉ちゃんって凄いんだね、こんな劣悪な環境でたった1人で1年間も生きてきたんでしょ?)


「ああ...まあね、でも私だって最初っから1人だった訳じゃないから」


(そうなんだ...、所で他の皆って今はどうしてるの?)


「...」


 少し間を開けてからお姉ちゃんは喋ってくれました。


「皆...奴に食われたんだ、この沼の番人にね」


(番人?)


「ああ、私らの天敵に【タイコウ】って言う種族がいるんだけど、その親玉である【アガルガン】って奴に挑んでは皆消えていったんだよね...」


(そう...なんだ...、でもなんでそんな強い奴に皆挑んだの?)


「それはね、私達がここから外に出るためにはそいつを倒さないといけないからさ、ここ【ブクゲロ沼】は凄く大きな天然樹で囲まれた自然の牢獄なんだ、ここから出れる水路に潜んで脱走者を喰って生き残っているのが【アガルガン】って言えば分かるかな?」


 そう言われるとなんとなく理解できました。


「そうなんだ、でだったらそいつに挑みさえしなければ皆死なずに済んだのにね...、なんで挑んじゃったんだろう...」


 私の質問に彼女は答える。


「それはね、皆がそれぞれの【】を持っていたからだと思うよ」


「【夢】?」


「そうさ、例えば私は噂でしか聞いたことのない【お城】ってとこに行って美味いもん沢山食べるのが夢だな! そこに行って実力が認められれば毎日こんなおぞましい命懸けの闘争を繰り返さなくても食っていけるらしいからな!」


 お姉ちゃんの夢はおっきくて今の私には良く分かりません。


「戦わなくても食べて行ける? お姉ちゃんの言ってる事が良く分からないよ?」


「ああ、まあ私にも分からんから気にするな! とにかく私はいつかこの【ブクゲロ沼】を出て行く! その時はケロナも一緒だ!」


 この時の私にはお姉ちゃんの夢がどの程度の理想なのか分かりませんでしたが、何もせずとも食って行けると言う言葉には魅力を感じずにはいられないのでした。

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