第438話 大人メイア④

 先に動いたのは私でした。


 やはり彼女の魔法の種類の豊富さに抗うには接近するしか私に勝ち目はないのです。


「...!」


 無言で彼女に接近して首をはねる為に水の刃を出現させる!


 一気に距離を縮められた事に驚いたのか、彼女はまだ呪文の詠唱をしている。


(取った!!)


 そう思った瞬間でした。


 ブンッ!! と言う空気を切る音を発しながら大きな拳が私の体に衝突する。


「ガハッ...!」


 私は血反吐を吐きながら優勝賞品のある刀の元へと飛ばされた。


 重たい一撃を貰った私はなかなか立てない...。


 どうやらわざと遅く詠唱をしているように見せかけて本当はとうの昔に詠唱を終えていて、いつでも巨大な拳を出現させることが出来たのだろう。


 してやられた私はゆっくりと立ち上がり彼女の方を見てみる。


 すると、先ほど現れた【死の案内人】よりも大きな何かが私の方を見ていた。


 人の形をしてはいるが、まるで巨人だ。


「ははっ...何そいつ、まだ奥の手を残してたの?」


 私の言葉にメイアは答えてくれる。


「この子は【ザナイン伯爵】メイアとエルサお姉ちゃんの父親だった物の魂をメイアが人形に封じ込めて自我を殺してあげたの...、今ではもうメイアの言うことしか聞けない操り人形だけどね」


「実の親の魂を人形に憑依させたのか...、どうりで完成度が他の奴より高いわけだ...」


 事実、今の一撃はこれまで何度も受けてきたエルサの繰り出してきたどの攻撃よりも重たかった。


【蒼極】のオーラのおかげでダメージを軽減されたとは言え、とんでもない痛みが全身に伝わり骨が折れるレベルの衝撃を受けている体にもう一度あの衝撃が加われば...。


 いや、それ以上は考えるのをやめよう...。


 恐怖は動きを悪くする。


 私はよろよろと立ち上がり目の前にいる巨人を見あげながらも、今の状況から勝てる方法を考えるのでした。

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