「ちょっと！　私が顔を出しても【エリーゼ号】を出せないってどう言うことよ！！」

　停泊場にエリーゼの怒声が鳴り響く。

「そう言われましても...」

　彼女の迫力にたじたじな受付係を見かねた私は声をかけた。

「どうしたの？」

「あっ、ケロナお姉様、実は最近船着場の出入り口に大王イカが住み着いたらしくて船を出せないと言うんですよ」

　エリーゼがそう呟いた瞬間に受付係も口を出してくる。

「はい...、ですので【シュライン公爵】の一人娘であるエリーゼ嬢を船出させるのは少しお待ちいただきたいのです」

「少しっていつぐらいまで？」

「そうですね、2日後に冒険者が集まってあの迎撃船にて大王イカを駆除して貰うので、早くても3〜4日はかかりますね」

　受付係の指差した方向には確かに立派な迎撃戦が見えていました。

　しかし、その言葉を聞いたレイナがこう呟く。

「3〜4日ですか...、流石にそれはまずいですね、それを待つくらいなら...」

　チラチラと私の方を見てくる彼女の意思に私も同調する。

「わかった、大王イカだっけ？　私達が討伐してくるからエリーゼは少しまってて」

　私の言葉に受付係はうろたえていました。

「えっ！？　あなた方がですか？　大王イカを討伐してくれるのであればこちらとしてもありがたい限りですが...」

　受付係は私達の身なりを見て凄く残念そうな表情を浮かべている。

「言葉だけでも嬉しく思いますが、大王イカの戦闘レベルは70です、貴方がたに討伐出来るほど容易い相手ではないかと...」

　そう静かに呟く彼にレイナは自身のカードを見せる。

「これなら信用できますよね？」

　ニヤリと笑いながらレイナの冒険者カードを見た受付嬢は急にピシッっと姿勢を正した。

「はっ！　Aランク冒険者の【魔女】レイナ様とそのお仲間達であれば問題ありません！」

　カードを見せる前と見せた後では明らかに反応が変わっていたのが気になるがまあ良いだろう。

　私達はエリーゼを置いて大王イカ討伐にへと漕ぎ出すのでした。

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