第829話 【大帝城】の最後

 私はリュアの背中に乗って【大帝城】から脱出しました。


 その道中に私は崩れゆく【大帝城】の最後を見てようやく終わったのだと実感でき嬉しく思う。


(ようやく終わる...)


 ...終わる? 何がだ?


 そう、この世界に置いて私の役目はこれで終わりなのです。


 そもそも私がこの世界に残っていた理由は...!


「サラ...」


 私は未だ磔にされているサラを解放しました。


 酷く消耗していますがまだ息はあります。


 そんな私の行動をリュアは邪険に扱う。


「ちょっと、今移動中だよ、その子が落ちても知らないからね」


「大丈夫、私がサラを離す事なんてないから」


 私の行動にリュアは驚きの表情をしていました。


「ケロナ...!? いやそんな訳ないわよね? 貴女はあっちの世界にヨミを残して来ている事を忘れたの?」


「...分かってる」


 リュアの言うヨミとは私が昔に気まぐれで助けた子供だ。


 赤ん坊の頃から私が世話をしているので私の事をケロナさんと呼び師匠として慕われている。


 人間の子供なのだが筋が良くそこそこ強い。


 なぜ私が人間の子供を育てるようになったのかと言うと、ヨミの母さんとの約束である。


 彼女が死ぬ間際に私にヨミの事を頼んできたのだ。


 私は彼女から貰った大福の味に免じてヨミの事を一人前に育てようと思ったのである。


 私にはその約束を無碍にする事などできない。


 私はサラの頭を撫でながら回復をかけて彼女の名前を呟くのでした。


「サラ...」


 と。

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