第622話 【何も求めない医師】
「ミルシュちゃん! 今日は何して遊ぶ!?」
「クピッ♪」
2人は公園に着くといきなり砂場の方に向かって行きました。
「やれやれ...」
私とハルトさんはベンチに座って談笑に浸る事にしましょうか。
そうしていると町ゆく人たちから「若い夫婦ねぇ」などと勘違いされている声が聞こえてくる。
私は別に気にしないが、ハルトさん的には大丈夫なのだろうか?
そう思っていたが、どうやら慣れているようでそこまで嫌そうな顔はしていなかったのでそのまま話を続けた。
私は今の仕事について話をする。
「実は今【ペリア診療所】ってところで依頼を受けているんだけど...」
その言葉に彼は食いついてくる。
「【ペリア診療所】!? ってことはペリアさんの研究の手伝いをしてるのか!?」
「え...ええ」
「それはいい事だな、あの人ちょっとおかしいけど医者としての腕はピカイチだし、普通の医師と違って
私はその会話の中におかしい部分を突き詰める。
「
「言ったままの意味だ、彼女は貧乏人からは金銭を求めない、まるで自分の診療所の評判を上げる事を第一目的にしてるみたいだな」
「なんでそんな事を...」
「さあ? 俺にもよく分からないけど、とにかく彼女は金を持ってる人からは金をせしめるけど、貧乏人からは何も求めない、だから貧乏人のなかでは【何も求めない医師】と言われてるんだよ」
「【何も求めない医師】?」
いいえ、そんな訳あるはずがありません。
自分の技術に対して何も対価を求めない者なんている訳がないのです。
私はこの話を聞いていると、なんだか【ペリア診療所】の存在そのものが怪しく感じてくるのでした。
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