第34話 賞金首ハント

「行くぞ!!」


 ディールの掛け声と共に一斉に飛び出る冒険者達!!。


 私も一歩遅れて飛び出たのだが、目の前に巨大な狼が現れたので一瞬心臓が飛び出そうになった。


 それは狼と言うにはあまりにも大きく、まるで馬くらいの大きさがある。


 初見で見ればまずその大きさに身震いしてしまうだろう。



 そんな私の肩を叩いて我に帰らせてくれたのは盗賊のサーシャだった。


「ボサッとしない!!」


 そう言われてからはすぐに動き始める。


 と言っても私に出来ることはない。


 正直言って石ころを投げてもそこまでのダメージにはならないだろうし、ここは遠くに離れて皆の邪魔にならない様にしていようと思う。


「くらいやがれ!!」


 と叫ぶディールの剣撃が【レッドウルフ】の顔面を切り刻む!!。


「グギャ!!」


 と言う獣の声をあげる狼は彼の頭を噛み砕こうと歯を鳴らしながら襲いかかるのだが...。


「はんっ! あめ〜よ!!」


 ディールは片手に持っている鉄の盾で狼の攻撃を軽く跳ね除けた!。


「上手い!!」


 初心者の私でも今のは分かる。


 盾を上手く使って衝撃を外に逃しているのだ。


 熟練の技がなくてはこんな芸当、そうはできない。


「あんまり期待してなかったけどディールってちゃんと冒険者してたんだ」


 と思わず口走ってしまう私。


「嬢ちゃん、よ〜く聞こえてるぜ」


 ちょっと怒った顔で私の方を見ている彼の隙を突いた攻撃が放たれる!。


「あっ! 危ない!!」


 私がそう叫んだ時にはサーシャが短剣を投げて牽制をしていた。


「キャン!!」


 片目に突き刺さった短剣に苦悶の表情を浮かべる狼にサラの火球が襲いかかる!!。


 ボウっ!! と小さな火球が狼の胴を捉えそれなりのダメージになっていた。


「グルル...」


 出会って数秒も立たないうちにもう決着がつきそうである。


(ありゃ? こんなもんなのか【レッドウルフ】って、賞金首って聞いてたからもっと強いかと思ってた)


 なんて言うフラグを立ててしまった私の頭上に、スラナ村でマーカイルを出現させた聖典がどこからともなく現れるのでした。

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