第650話 犠牲者達
カ〜ンカ〜ン。
崩壊した都市に鐘の音が虚しく響き渡る...。
完全に機能を停止した【フィルア王国】であったが、全ての人民が死に絶えた訳ではない。
その証拠に私はこの瞳で葬儀の列を倒壊した家の上から見下ろしていました。
色々な所から鳴き声が聞こえてくる...。
「母さん!!」
「父さん!!」
「クリュニア!!」
「ガイシュ!!」
他人の名前を叫ぶ者や肉親の弔いをする者と多岐に渡るが、それらはまだマシな部類と言えるだろう。
何故なら、いまだに掘り出されていない死体や肉親を失った子供の姿もちらほらと見えているからだ。
「...くそっ!!」
私は壁に向かって拳を振り抜いた!
すると壁は簡単に砕け散る。
これだけの力が私にはあった筈なのに、結局この人たちを守る事はできなかった。
いや...、むしろ私がこの場にいたせいでこれだけの大惨事を引き起こしてしまったと言えてしまうだろう。
しばらく下の様子を伺っていると、誰かが走ってとある人物の名前を叫んでいるのがわかった。
「ペリア先生!! ペリア先生はいませんか!?」
そう、彼女に治療された者は確かに【眷属】になってしまっていたけれど、その様子を間近で見ていた同行者達ならば【眷属】にならずに済んだ者達もいるのだろう。
そういった者達がそこら中で走り回り、もうこの世に居ない医者の名を叫び続けているのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます