第200話 声②

(こっち...こっちだよ...)


「まただ...」


 私が森の中に入って早4分。


 皆が私の後ろを歩きながら話し始めました。


「ケロナお姉ちゃんどうしたの?」


「なんでも声が聞こえるらしいんですけど...、エリーゼさんには聞こえますか?」


「聞こえませんわ、でも私達には聞こえずケロナお姉様にだけ聞こえる声ってなんだかロマンチックですね...」


 レイナは楽観的なエリーゼの言葉に大きくため息を吐く。


「こんな時にロマンチックとか言っている場合ですか...、私達は遭難しているんですからね!」


「でも、ケロナお姉ちゃんには聞こえているんだからきっと大丈夫だよ、【精神系】の魔法でテレパシーってのがあったからきっとそれで誰かが遭難しているのを察知してくれたんじゃないかな?」


 気楽そうなサラの声に再び大きなため息を吐くレイナ。


「はぁ...、今このパーティで現状をハッキリと理解してるのは私だけなようですね...」


 そう言いつつも私の後をついてきてくれるあたり面倒見は良いようだ。


「ケロナ、早く声のする方向に向かってくださいね、満足したら直ぐに町までの道のりを探しますから」


 そう身近で呟く彼女の声よりも、脳内に直接届く念話のような声の方にばかり注意してしまう私なのでした。

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