第774話 忍者と鍛治職人VS【雷帝】⑦
〜3周目〜
レースも終盤に差し掛かりましたが、奴の姿はまだ見えてこないので安心してアクセルを踏み込んでいました。
「このままなら勝てそうだね!」
満面の笑みでそう呟くポニーさんに私はこう言っておきます。
「また調子に乗ってる! まだまだ油断は出来ませんよ、こう言う勝負事は最後の最後まで分からないんですからね!」
とは言っても先程の【バチバチ甲羅】のお陰でアイテムの使い方も学習した私に死角はないはずだ。
ポニーさんは加速用アイテムの【飛ばしキノコ】を持っていますし、私は妨害用のアイテム【スベスベバナナ】を保有しています。
試して見たところ角カートが持てるアイテムは一個だけな様なのでこれでいいと思います。
(あっちはどう足掻いても1人なのだから、2人分のアイテムに叶うはずがありません)
安心し切って良い状況ではありませんが、私も心のどこかで油断していたのでしょう。
背後から近づいてくる【雷帝】の姿に全く気がつかずにここまで接近されていたのですから...!
「なっ!? いつのまに私達の真後ろに!?」
「全くカートの音もしなかったよね!?」
驚く私達に彼は左手に持ったひらひらの紙切れを見せびらかしながら説明してくれました。
「くっくっくっ...、この【キエキエ幽霊】と言うアイテムを使っていたのさ、これがあれば一時的にカートの音や存在を消せるんだよ」
「そんなのズルじゃん!」
またもや噛み付くポニーさんに彼はこう返す。
「ルール上にあるアイテムを使っただけだから問題ないもんね〜! それよりもそっちのピンク髪のホビットが使った手裏剣の方がズルだろ!」
まあ確かに、私の手裏剣はゲーム内にあるアイテムではありませんからね。
彼の言うことはごもっともですが私からすればカートによる衝突も充分なズルだと思います。
「確かに私の行為はズルでしょう、ですがあなたもいきなり私たちをカートによる衝突で吹き飛ばしましたよね? それであおいこさまです」
「カートの衝突はこのゲームでの醍醐味なんだよ!! 話の分からない餓鬼だな!」
何やら怒っていますが私の脳内はいたって冷静です。
(【雷帝】はアイテムを使って追ってきた...、と言うことは今は丸腰、私のアイテムで時間を稼いでポニーさんが加速すれば...!)
勝機の見えた私は敢えて彼の前に躍り出ました。
「また吹き飛ばされたいか!?」
彼のカートが私を吹き飛ばそうと近づいた瞬間を見計らい【スベスベバナナ】をコース内に設置してあげるのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます