第727話 宿敵
我は氷漬けになった宿敵の姿を見て静かに笑う。
「嘆かわしい...、我の宿敵である
我は力を込めて奴の氷を砕く!!
以下に凍結の呪文とは言えども、圧倒的な魔力をぶつけてやれば砕くのは容易い。
パリンと言う音と共に奴を閉じ込めていた氷の檻は砕け散り、中身がゆっくりと地上に降り立った。
青く長い髪を腰まで垂らしながら、ゆっくりと赤い瞳を曝け出す。
そしてその瞳に我を映し出した奴の最初の言葉がこうだった。
「リギリアル...、背ぇ...縮んだね...」
まさか背の事を言われるとは思わなかったので少しイラつく。
「背が縮んだだと? そんな物は依代によって大きく左右されるだろうに...、言っておくが今の我の依代は今までのどの体よりも強力だぞ」
彼女はそう言う我を見てクスッと笑う。
「そんな少女の体がかしら?」
(見た目が幼女のお前に言われたくない)
そう言いたい所ではあるが、彼女の笑みの裏側にある殺意に我はニヤリと笑った。
(油断しているように見えて実際の所は常に戦闘態勢...、さすがは【大帝】と言った所か...)
「さて...と、それで私になんの用? 挨拶にきただけなのなら早く帰ってちょうだい、私はこれから世界中の人間を滅ぼさないといけないからね」
全裸のままぐぐ〜っと背伸びをする彼女に砂鉄での攻撃を試みる。
「それは奇遇だな...、我も貴様を殺した後でこの世界を破壊するつもりであったからな...、くしくも目的は同じと言うわけだな」
ほんの挨拶がわりの攻撃は奴の直前で止められる。
突如として現れた水の衣が砂鉄を洗い流してしまったのだ。
「あなたと私の目的が同じ? 笑わせてくれるわね、貴方が行おうとしているのはただの破壊、私が行うのは私怨と言う違いがあるわ」
「私怨...か、それほどまでにあの幼児に思い入れがあったと言うのか? 【大帝】ともあろう者が...」
「なんとでも言いなさい、私はフィナの為に貴方と戦っていただけ、今となっては貴方と戦う理由なんて私にはないの、分かったら帰って」
彼女はそう言いながら我の足元から水の剣を生やして反撃してくる。
それを軽やかに躱した我の心は今までにないほどに高揚していた。
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