第551話 1人

 パチパチ...。


 私は1人夜の森で火を起こしていた。


(...思えばいつぶりだろうか? 1人で夜を明かすのは...)


 この世界に来てから...?


 いや、それ以前の世界でも1人になることなんて殆どなかった。


 私の側には必ず誰かがいたのを今でも覚えている。


 そう考えれば考えるほどに私の肩は軽くなった。


(...これからは思う存分にコレを振るえる)


 私はこの刀【あまみん☆=バスター】に秘められた力をこの世界に来てからは使った事はない。


 その力を使わない理由はただ一つ、仲間を巻き込んでしまうからだ。


 以前の世界の仲間であれば巻き込んでしまったとしても死に至る事はなかっただろうけど、この世界の仲間に記憶を取り戻した私の【極限】の技が当たってしまえば骨も残らないだろう事は明白だった。


 私は何よりもを恐れた。


(自分の技で仲間を殺してしまったら...)


 私はそれが恐ろしくて堪らない。


 昨日まで一緒に戦っていた友を巻き込んでしまうかも知れないと言う恐怖に私は耐えられなかったのだ。


 私は目の前に燃えている篝火を眺めながら息を吐いた。


「これで良かったんだ...、何も皆を巻き込む事はない、私が【次元龍】も【大帝】も消し去ればいいだけの話だ」


 私がそう呟いた時でした。


『ふ〜ん...、いつか僕たちを消すつもりなんだ〜?』


 そう胸の奥底から声が聞こえたのは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る