第484話 【変異】③

 私の砂鉄武器がクラールに向かって飛んでいきます、その全てが巨躯に突き刺さろうとする!!


(とった!!)


 そう思う私でしたが...。


「ぐ...、ぐぬぅぁぁぁぁあああ!!!」


 彼の両肩から漆黒の翼が出現し、私の作り出した大量の武器を全て叩き落としていきます!


 それも綺麗に自身の体に傷をつける事なく凄まじい勢いで羽と腕を動かして私の攻撃を見事なまでに完封してしまいました。


『...やるね』


「ふむ、そちらこそやるな...」


 お互いに睨み合って動かないでいると...。


「こういう時こそ勇者の出番だ!!」


 と叫びながらクラールに【ブレイブ・ソード】を放つキィア。


 それを私はただ冷徹に見ていました。


「はぁぁぁ!!! 【ブレイブ・ソード】!!」


 凄まじい魔力の波動が敵を焼き払う勇者の大技ですが...。


「ふむ、人の身にしてはなかなかやるな...、だが...異形の我らにとってはその程度の膂力などなんの障害にもならん!」


 腕の一振りで【ブレイブ・ソード】の余波を完全にかき消してしまった!


「そんな...」


 怯む勇者に黒牛の剛腕が唸る!


「危ないですわ!!!」


 その間にエリーゼが割って入り、キィアの前に立ち巨大な魔力盾を形成した!


 それを見たクラールは感心している。


「その歳でそれ程の魔力盾を作り上げるとは...、なかなかのやり手なようだな、だが手加減はせんぞ!!」


 グワン!! と風を切り凄まじい威力の一撃がエリーゼの盾を突き破る!!


「ぐぅ!!!?」


 光龍の素材で作られた盾と鎧を持っていると言うのに、魔力盾ごと壁際まで吹き飛ばされて叩きつけられているエリーゼ。


「エリーゼちゃん!!」


 キィアの叫び声が聞こえた瞬間、クラールの首の上には桜色の髪を持つ静かなる暗殺者が飛び乗っていました。


「油断しましたね...」


 ザシュ!


 その剣の音と共に鮮血が飛び散るのでした。

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