第86話 ガーディンの邸宅⑤

 私は移動の最中にレイナに聞いてみた。


「私とサラの装備品はあなたが手入れをしてくれているんでしょう? 私にはわかってる」


「...ええ、そうですね」


 彼女はそう呟くと私達を食堂に連れて行く。


「いや〜お二人ともよくお越しいただけました、今夜はメイドに作らせた我が家自慢の味をご賞味頂くためにお二人をお呼びしたのです」


 ずらりと並べられた豪華な食事によだれを垂らさずにはいられない様子のサラ。


「見て見て! あれとかすっごく美味しそう!!」


 豚の丸焼きにたっぷりと香辛料が添えられた物や、エビの殻を綺麗に盛りつけたグラタンのような物を指差している。


「ははっ、妹さんは早く食事を取りたいようですな、ケロナさんも早く座られてはどうでしょうか?」


 少し急かしてくるような素振りを見せる彼でしたが、まあ良いでしょう。


 一食分浮くと思えば彼と食事を取るのも悪くありません。


 私達は彼と食事を取ることにしました。


「いただきまーす!!」


 いきなり乾杯の合図も待たずに食べ始めるサラを見て笑うガーディン。


「ははっ、元気な子ですな」


 などと言いながらも獲物を見るような目で私の事を見てくる彼の視線は鋭い。


(これは油断ならない...)


 そう思っていたのだが、食事自体は円滑に進んでいく。


 手を動かしながら美味しい食事に何ども目が飛び出そうになっていましたが、余計な事を言わないようにしていると...。


「ではそろそろ我が領地での名産品、ブドウ果汁のワインをお二人に飲んでみてほしいのです」


 とグラスにワインが注がれた。


 しかし、明らかに高価そうなワインのラベルが貼られていたのでここは断っておきましょう。


「残念だけど私はお酒が無理なので遠慮しておきます」


 はっきりとそう答える私にガーディンはあからさまに慌て始める。


「ちょっとでいいんです! 一口飲んでもらえればきっとこのワインの美味しさに一目惚れしてしまう事でしょう!」


 その後も自分の領地で作られたワインの良さを私に延々と語ってきたので仕方なく一口だけ飲む事にしました。


 勿論サラには飲ませませんけどね。


「私も飲みたい!!」


 とサラが入ってきましたが「ダメっ!」と答えてワイングラスを取り上げます。


 捨てるのも勿体無いので私がサラの分のワインも飲むことにしましょう。


 ではとりあえず一口...。


 ゴクリ...。

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