第351話 【Sランク】の素材

「私が欲しいのは爪2つと目玉一つ、そして角2つと一人分の鎧と盾が作れるだけの鱗かな」


 私の言葉にギルドマスターは目を丸くしました。


「それだけでいいのか?」


「ええ、大丈夫ですよ? 後は全てギルド側に売り払います」


 私の言葉に感謝の言葉を設ける彼。


「ありがとうございます!」


 まあ、これだけの反応を彼が示すのも分かる。


 光龍の素材が高いのもあるけれど、やっぱり自分のギルドから【Sランク】の依頼達成の報告書を書ける事が大きいのだ。


「では一度ギルドに戻って皆さんの身分証明をもう一度行わせていただきたいのですが...、よろしいでしょうか?」


「あっはい、大丈夫です...」


 そこまで言いかけた私でしたが、とある事に気が付きました。


(あっ...そう言えばエリーゼさんの父さんから指名手配されているんでしたよね? 私達...)


 このまま冒険者ランクを上げてしまったらどこでエリーゼさんが【Sランク】になったのかバレてしまいます。


 少し考える私でしたが、冒険者ランク【S】の魅力には敵いません。


「どうかされましたか?」


「い...いえ! お願いします!」


 私は何食わぬ笑顔でお願いするのでした。

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