第818話 戦況悪化

 私が呪文を詠唱していると、ファウストの奴が私に向かって人差し指をくいっと動かしました。


「...えっ?」


 ただただ指を少し動かしただけだと言うのに極太の氷柱が私の腹部を突き刺した。


 確かな痛みを感じながら、私は腹部を押さえながらその場に倒れる。


「レイナ!!」


 アルフィ様が私の名を叫びながら回復の魔法をかけようとした瞬間!!  


「遅いよアルフィ」


 とファウストがアルフィ様に炎撃魔法を放つ。


「【聖女の祈り】!」


 アルフィ様は【聖女の祈り】で攻撃に耐える物の、私への回復を遅らせてしまった。


「レイナさん!」


 今度はプラルがやってきて私の体を担ぎながら一度戦線離脱しようとしたが...。


「だから遅いって」


 ザシュ...。


「かはっ!?」


 今度はプラルが背中を斬られる。


 仲間の血を見たキィアとエリーゼが飛びかかるもののあっさりと返り討ちにあってしまった。


「「このぉぉぉ!!!」」


 今度はミカとミルシュが突撃していったのだが、やはり簡単に遊ばれてしまう。


「ぐっ!」


「ミカ! こいつ強いよ!!!」


「どいて!」


 2人の攻撃では彼を倒せないと判断したアルフィ様が【私の選ぶ道アルフィ・ロード】を放つ!


 私の【私の物語レイナ・エピソード】よりも力強い火炎魔法が彼に襲い掛かったのだが...!


 パチンと指を鳴らしただけでそれを無効化されてしまった。


「嘘...でしょ? アレを指パッチンで消すか普通...」


「今の魔法今まで見た中でも1人で撃てる最高クラスの魔法だったよね?」


 ミカとミルシュの言葉で戦況がが確実に悪くなっていくのを感じた私は痛みを堪えて立ち上がった。


「皆さん! お待たせしました! また1から詠唱を...!」


 私がそこまで言いかけた瞬間にもう一度指をパチっと鳴らすファウスト。


 最初こそ何のためにその動きをしたのか分かりませんでしたが、すぐさまその意味を理解しました。


「う...っ!?」


 いきなり腹部に針を刺すような痛みが走り抜ける。


 再び倒れる私に今度こそ回復魔法をかけたアルフィ様でしたが...!


「あぁぁ....! ああぁぁあぁあああ!!!」


 私は苦悶の表情でお腹を押さえ続けていました。


「何故!? 回復魔法はかかっているはず!」


 そう驚くアルフィ様にファウストが説明してくれる。


「残念だが、レイナにはもう期待しない方が良い、先程の氷柱攻撃の時にそいつの腹の中に複数の氷を忍ばせて置いたのさ、僕の魔力で自由に動く小さな氷の針の様な物が僕の命令一つで彼女の体内を動き回っているんだよ」


 こ...こんなのは反則です!


 体内に魔法を仕込まれてしまってはどれだけ優秀な回復魔法でも意味がない。


 このままでは【最強パーティアルティ究極魔法マーズ】が発動できません!


 これ以上私の魔法に頼れないと分かった時の皆の表情はとてつもなく暗い物となっているのでした。

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