第819話 戦況悪化②

「がっ!!」


 キィアの苦悶の声が飛び交う。


「そらそら! 勇者の力とやらを見せてくれよ!」


 一方的に押されている勇者を見たアルフィ様がファウストに魔法を放ちましたが...。


「今のアルフィ様の攻撃なんて全く効かないね」


 そう言って簡単にかき消してきます!


「くっ!」


「「はぁぁぁぁ!!!」」


 今度はミカとミルシュが攻撃に参加しますが、やはり有効打にはなりえません。


(やっぱり私が...!)


 そう思って体を起き上がらせようとする度に激痛が走るのです。


「ああああぁぁぁぁ!!!!」


 私の絶叫の声を聞いて楽しそうに笑う彼の根性は腐っています。


「良い声だよレイナ、苦悶に満ちた激痛の声...、僕は好きだな」


(おあいにく様、私は大っ嫌いだけどね!!)


 キッ! と奴を睨みつけて見ると「お〜怖い」と反応がありました。


「実際レイナを1番警戒しているんだよ僕は、君の放った【最強パーティアルティ究極魔法マーズ】はまさしく至高の魔法と言って過言ではないだろう、あの【大帝】様を最も容易く倒してしまうくらいにはね」


 どうやら彼は私の魔法を認めている様です。


「だからこそ君だけは動けなくなくしておかないとね、あの魔法を唱えられると僕がこの力に順応するまでにやられちゃうかもしれないし」


 その言葉でこいつの目的がハッキリとしました。


(こいつ! 私達をただの練習相手だと思っているのですね!)


 彼は【大帝】と【次元龍】の力を試して慣らす為にワザと戦闘を長引かせているのでしょう。


 いつでも私達を殺せる力を持っていながらそうしないのはそう言った理由があるからです。


 ならば寧ろ都合がいい。


 もう一度【世界最強パーティ究極魔法】を唱えることさえ出来れば勝利は目前なのです。


(お腹に広がる痛みを抑えないと!)


 自分の腹部に魔力を集中させ、どうにか体内の氷を溶かそうとしましたが...。


「無駄だよ、君の体内に入っている魔法を操っているのは【大帝】様の力だ、たかだか人間1人が争ってどうにかできる代物じゃない」


 そんな事は言われなくても分かっています!


 ですが何もやらなければこのまま私達は奴に弄ばれて全滅するのを待つだけなのです!


 だったら最後の瞬間まで自分にできることをやっておこうと思う私なのでした。

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