第820話 戦況悪化③

 声が聞こえる。


「...ィア!!! 早く体勢を立て直して!!」


「分かってる!!」


 激しい攻防の音が耳について離れない。


(これは...誰の声?)


 聞き覚えのある声ばかりは聞こえてくる。


「アルフィさんとは私の後ろでレイナさんを助けてあげてください」


「分かった、エリーゼも気をつけて」


「私達は?」


「ミルシュとミカはキィアの援護、プラルは隙を突いてファウストに攻撃!」


「「分かった」」


「こっちもわかった、けれど奴の隙をつけるかは期待しないで欲しい」


「分かってる好きなんてほとんどないもんね」


 1番聞き覚えのある声が聞こえた。


(サラ?)


 確かにサラに似た声が聞こえてくる。


 しかし、ほかの皆はちゃんとした名前で呼ばれているのにサラだけがアルフィと言う別の名前で呼ばれているのが不可解だ。


(これは夢?)


 そう思ってしまうほどの虚な会話に私は耳を澄ます。


「うわぁぁぁぁぁ!!」


「キィア!!」


「わっ!」


「ミルシュ!!」


「きゃあ!!」


「ミカ!!」


「あの3人があんなにあっさりと倒されるなんて...、これが【次元大帝ファウスト】」


 ポニーの声も聞こえてきた。


 なんだ? 何が起こっている? あっちの世界でミカとミルシュと話した後の会話が全て曖昧だ。


「このままじゃ全滅...か」


 サラらしき声の主が何やらハッキリとした声を放つ。


「アルフィ様?」


「レイナは黙ってて、傷口が広がっちゃうから」


「アルフィ、今の君では僕に勝てないとまだ分からないかい? でもそれで良いんだよ、いくらでもかかってきてくれ、君たちくらいに手頃な練習相手はそういないからね」


「言わせておけば...!」


「レイナは黙っていてくれないか? 君はもう戦闘不能何だからさ!」


「あぁぁっぁぁっぁぁっ!!!!!!」


「レイナ!! ファウスト! 貴様!!」


「おっ? 良い顔になられましたねアルフィ様、最後に何かとっておきの魔法でお隠しているんですか?」


「...一つだけある」


「ほう、それは楽しみです」


「...でもこれを使ったらアルフィは消えてなくなるだろう、今世の為にずっと温存してきた魔法だからね、これが完成すると言う事はつまり前世の私の終わりを意味する」


「存在を賭けた魔法と言う訳ですか」


「ダメですアルフィ様!!」


「五月蝿いレイナには退場して貰おうか、せっかくのアルフィ様の意向が無駄にならないようにな」


「ああぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁあぁ!!!!」


「レイナ!! やめろファウスト!! 相手は私だ!」


「五月蝿い魔女に仕置きをしてあげていただけですよ」


「...良いだろう、私の魔法を見せてあげるよ、森羅万象悠久の時を生き続けた魔女の極意...、最後まで味わって貰う」


 そう呟くサラの声が急に静かになり彼女の魔力の波動を感じた。


「これは!?」


 ファウストとやらの驚く声が聞こえてくる。


「まだ誰にも見せたことのない魔法だったんだけどねぇ...、今世で編み出したサラの最強魔術さ、流石に威力で【最強パーティアルティ究極魔法マーズ】を上回る事は出来ないけれど、今のあんたを吹き飛ばすくらい訳はない!」


 凄まじいまでの魔力の波動に肌が痛みを感じた。


「くらえ...、これが【アルフィ前世の私】が考案しそして【サラ今世の私】が完成させる最強魔術!! 【私の夢サラ・ドリーム】!!」

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