第821話 混濁の視線

「...うっ」


 全身が痛い...。


 体温がかなり低く自分が死にかけているのが分かる。


 一応自身に回復魔法をかけて応急処置をしながら徐々に目を凝らして行った。


 カンカンカンと金属を叩く音のみが聞こえてくる...。


 少しズル回復していく視力に私は目を疑った。


「...えっ?」


 そこには氷の十字架にかけられた皆の姿があったからだ。


 私の仲間が1人を除いて全員空中に浮いた十字架にかけられている。


「なにこれ...」


 状況の整理が追いつかない。


 目の前にはアポロに似た男がポニーに指示を出して何かを作らせているように見えた。


 とにかく目の前の男が危険だと自己判断した私は痛む体を立ち上がらせる。


「ポニーから離れなさい!」


 私が声を上げてそう叫ぶと男はこちらを向いた。


「ケロナ、丁度いい時間に起きたね、今きみの刀を打ち直している所なんだ」


「なに?」


 確かにポニーが打ち直しているのは私の刀だ。


「なぜそんな事をさせている?」


「それは勿論からさ」


 男はニヤリと笑いながらそう答えた。


 そんな事をして何の意味があるのかは分かりませんがこちらにとっては好都合です。


 今のうちに体力を回復させておきましょう。


「貴方は何者なの? アポロじゃないよね?」


「アポロか、僕は確かにきみの知っているアポロではない、今の僕はきみの知っているアポロが進化した姿【次元大帝ファウスト】さ」


 自信満々にそう答える彼の魔力は確かに圧倒的です。


 こうして向かい合っているだけでも怖いくらいの力の差を感じずにはいられません。


 私と彼が無駄な会話で時間を消費していると...。


「出来ました!」


 とポニーが声を上げた。


 まだ全回復していないのにこいつは...と思いながらも仕上がった刀を見て私は驚きの声を上げた。


「これは!?」

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