第329話 メイア⑥

「お箸の持ち方はね...、こうやって鉛筆を持つようにしたら良いんだよ」


 私は目の前で実践しながらメイアにレクチャーします。


「こう...?」


「そうそう! 大丈夫そんな感じだよ!」


 彼女の要領がいいのですぐに箸を持てるようになりました。


「掴めた! 寿司を掴めたよ!!」


 笑顔で私の方を見つめる彼女は少し可愛くは思えてしまったが...。


(いいや...、サラの方が可愛いさ...)


 と思う事で事なきを得る私。


 大きく口を開けてサーモンを食べる彼女は「う〜ん♡」と声を漏らしていました。


「お姉ちゃん! これ美味しいね!」


(そりゃあ職人さんが握った寿司だから美味しだろうさ...)


 と思いつつも口には出さない。


「サーモン美味しいよね」


「うん! メイアこれ好き!」


 そう言いながらサーモンだけで6貫ほど食べた後にイカを頼む私。


「次はイカで」


「あいよ...」


 無愛想な店主がすぐさまイカを4貫作ってくれる。


「白い刺身...?」


「イカだよ、これも美味しいから食べてみて」


 私の言葉に釣られて恐る恐る手を伸ばす彼女。


 ゆっくりとイカを口に含むと想像よりも美味しかったのか目を輝かせていました。


「うん! 少しヌメっとしてるけど...これも美味しい!!」


 どんどん食べていく彼女の食べっぷりが面白くてついつい寿司を与えてしまう私。


(どのくらい食べるんだろうか? まあちっちゃい子だしあんまり食べないよね?)


 そう思いつつもついつい買い与えてしまった事を後で後悔するのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る