第814話 決着(?)

「うぁぁぁぁ!!!」


【大帝】が初めて絶叫を上げる。


 幼き体が炎の中で燃やされ続けているのだから当然だろう。


 彼女がどれだけその炎を凍らせようとしたとしてもそれは叶わない。


 我ら全員分の魔力が乗った敵を殺す為だけの魔法なのだから当然である。


 幼女の悲鳴を聞きながら我は余韻に浸っていた。


(これでこの体ともお別れだな)


 思えばケロナとは長い付き合いになったな。


 最後はちゃんと彼女にこの体を返そう。


 全ての敵を倒しきり安堵のため息を吐く。


 実にそんな瞬間だった。


「【次元龍】様、貴方というお方が最後の最後で油断するとは情けない」


 聞き覚えのある声と共に背後から襲われる。


 腹部をレイピアで刺されたような痛みが発生しているのだ。


 我はその声の主の名を叫ぶ。


「アポロ...? 貴様!!」


「もう遅いですよ、貴方は僕のとなる」


「なんの事だ?」


「すぐに分かりますよ」


 彼はニコニコしながらレイピアを我の体から引き抜いた。


「ぐっ!? この程度で我を倒せると...」


「倒せるなんて思っていませんよ、これは印をつけただけですから」


「印...?」


「死にかけの貴方を救った時に僕と契約を結びましたよね? 僕が貴方の体に傷の1つでもつけることができれば願いを聞き入れると、その為の印です」


 完全に油断していた我の落ち度だ。


「貴様!! 計ったな!!」


「何を今更、これで貴方の力は僕の物です、ドラゴンも悪魔も約束事には逆らえませんからね、願いを聞き入れてケロナから僕にへと移住して貰いましょう」


「ぐぬぅ!!」


 しまった! まさかこんな結果になるとは!!


 ケロナの仲間達には何が起こっているのか全く理解できていないだろう。


 此奴が我の力を手に入れてすることと言えば...!


 思い当たる事があるのにそれを口にできない。


 そんなもどかしさを覚えながら、我の意識はアポロと統合されて行くのだった。

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