第160話 【シュライン】のダンジョン⑥

「まだ行けます!」


 そう答えるエリーゼに私はこう呟いた。


「ダメっ、貴方が思っている以上に貴方の体は消耗しているの、引きぎわを考えるのも冒険者として大切なことだからね」


 私の判断に彼女は頷く。


「そういうことなら指示に従いますわ、お姉様」


「素直でよろしい、それにしても初めてにしては解体の手際が良かったよ」


「本当ですか!?」


 目を輝かせながら私に顔を近づけてくる彼女の顔を遠ざけるように頬を押す。


「近い近い...」


 ググッと彼女の頬を押しながらも褒めるべきところは褒めることにしてダメなところはきちんとダメだという私。


「後、思ってたよりも剣の扱いは上手だったね」


「本当ですか!?」


「うん、でもエリーゼは攻撃の後の後隙が大き過ぎるから、もうちょっと筋力を上げて剣を振り切らないように体を調整するのも大切なことだよ」


 アドバイスをしながら彼女の戦い方を見てしっかりと改善点を教えていく。


「分かりました! 今度からもうちょっと筋トレの回数を増やします!」


 その場で腕たせ伏せを始めようとする彼女を見て思わず笑ってしまう私。


「今はいいって、取り敢えずダンジョンから抜けようか」


 私が一歩踏み出すとレイナに肩を掴まれる。


「私をお忘れですか? ケロナ」


 自信満々の表情で私にそう言ってくるのでこう返した。


「いや、忘れてないけど?」


「そうじゃなくてですね、ダンジョンから出るのであれば私に言ってくれれば一瞬でダンジョンの入り口まで戻れるんですよ」


 レイナ曰く、ダンジョンから瞬時に脱出する魔法を使えるようでした。


「じゃあ、頼む」


「はい、頼まれました」


 彼女は一呼吸置いてから【脱出魔法】と唱えて私達全員をダンジョンから脱出させるのでした。

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