第149話 新しいダンジョン

 私達が宿のレストランで朝食を取っていると、近くで同じく朝食を取っていた冒険者がこんな事を呟いたのが耳に止まる。


「そういえば聞いたか? 最近【シュライン】で新しいダンジョンが発見された事」


「ああ、あの猫人族の町だろう? ハーメルン渓谷を渡った先にある町」


「そうそう、どうやら結構難易度が高いらしくて高レベルの冒険者を募集してるらしいぞ、お前行ってみろよ」


「ハハッ、レベル20程度が高レベルってんなら行ってみてもいいかな」


 男達が冗談混じりに会話しているのにも関わらず、私の気分は内心穏やかではなくなった。


「新しいダンジョン...高レベル...」


 私の異変にいち早く気がついたサラが声をかけてくる。


「お姉ちゃん?」


「ケロナ、どうしたんですか?」


 レイナも続いて私の心配をしてくれたようだが、今はそんな事よりも新しくできたダンジョンと言う単語の方が気になってしまう。


 いても立ってもいられなくなった私は会話をしていた冒険者達に「その話詳しく聞かせて」と頼んでみる。


 最初こそ驚かれたものの、私達のパーティが最近ワイバーンを3匹狩ってきたのをみていたらしく、レイナが高レベルなことも知っていたからか心よく教えてくれた。


〜少女対談中〜


...。


〜対談終了〜


「ありがとう」


 情報をくれた冒険者達にお礼だけ言うと、宿の自室に戻り荷物をまとめて旅の準備をする私。


 私の急変ぶりに1番戸惑っているのはレイナでした。


「どうしたんですかケロナ!? 昨日まではあんなにゆったりとハーメルンでの生活を楽しんでいたじゃないですか」


 その言葉に対して私はこう答える。


「すまない、けれど分かって欲しい、もしかしたら【シュライン】に私とサラの全てを奪った奴らの首謀者がいるかもしれないんだ!」


「首謀者? ケロナとサラの全てを奪った? それってこの前話してくれた【聖典】と【大帝】の事ですか?」


 彼女の言葉に私はコクリと頷く。


「いや...、ですが確かケロナの話では【聖典】は破壊したって言いましたよね? 本当にただ新しいダンジョンができただけかもしれませんよ?」


 彼女の言う通りその可能性もあるのだが、【新しいダンジョン】【高レベル】の二つを満たしているダンジョンがあれば調べずにはいられなくなってしまう。


 慌てて旅路の用意をする私を見てやれやれと言う様に自分も身支度を済ませるレイナなのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る