第838話 レベル75の【高位冒険者】自信過剰な旅の純白魔女エルフ【レイナ】さんの魔術師見習い時代!! 短編集!! 第五段!! 落胆

 ガリレア王国へ滞在して数日、早くも傷薬の効能を実感した王からお褒めの言葉がかかる。


「魔女アルフィ、お前の作ったこの薬は実に効果が良い、お陰で隣国の敵対勢力を次々に休みなく攻め立てる事ができてな、次々と戦果を上げる事ができた、これは追加報酬だ」


 そう言いながらお金のたんまり入った袋を手渡されるアルフィ様。


「これからもご贔屓に...」


 王様からプレゼントされた大きな家に住み着き薬を作るマシーンと化した師匠の姿に最近私はイライラしていました。


「アルフィ様、そろそろ次の旅に出かけましょうよ」


 私がしたいのは薬を作る事だけではありません。


 魔術を極めて【魔女クイナ】のように格好いい【魔女】になる事です。


 勿論、薬を作る技術を上げる事も【魔女】として必要な事の一つではあります。


 けれど私が目指したのは格好いい【魔女】なのです。


 今のアルフィ様のようにお金に目が眩み王の手となり足となり薬を作り続けるような【魔女】は私の目指した魔女ではありません。


「アルフィ様、今のままでいいのですか?」


「何が?」


「何がって...、王様の言いなりになって薬を作ってる事ですよ!」


「ん〜...、まあいいんじゃないかな? 金払い良いしあの王様」


「...そうですか」


「んっ? どこ行くの?」


「ちょっと散歩に...」


 私は師匠の貰った豪勢な屋敷を後にして一人魔術の研鑽を行います。


 最近はアルフィ様と魔術の勉強をする事もめっきりと減ってしまい、一人で魔術の研鑽を行うことが多くなりました。


 町を歩けばアルフィ様の弟子と言うこともあり、声をかけられる事も多いのですが全て無視をします。


 私はいつも町の外に出て魔物を数匹狩って自分でお金を稼ぎながら解体の技術も向上させていきます。


 今では火のナイフを魔術で作り上げて簡単に解体出来るようになりました。


 最初の頃は血まみれになりながらナイフで解体作業を行なっていたと考えるとかなりの進歩です。


 もちろん最後は風のナイフで焼けた部分を削ぎ落とし、綺麗な状態で素材を保存しています。


 この時ばかりは師匠の言いつけで大きなリュックサックを背負っていた事を感謝しました。


 お陰で力と体力がついてこれくらいの量でも難なく素材を持って帰る事ができます。


「そろそろ1人立ちしようかな〜、最近アルフィ様の付き合い悪いし、もうちょっとレベルが上がれば私も【魔女】になれるしね」


 あれから更にレベルを上げて私のレベルは既に60の大台に乗っていました。


 75レベルに到達する事ができれば私は晴れて【魔女】となる事ができるのです。


 そう思うと余計にアルフィ様と一緒に居てはなかなかレベルが上がらない事にイライラを感じてしまう。


「...やっぱり帰ったら師弟関係を破棄してもらおう、私は早く【魔女】になりたい」


 別にアルフィ様の事を尊敬していない訳ではありませんが、最近の彼女の行動は少し目に余ります。


 もう少しで【魔女】になれると言うのに傷薬を作っているだけではレベルは上がりません。


 そう思うと歯痒くなるのです。


 私は苦虫を潰したような表情を浮かべながら、帰路に着くのでした。

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