第789話 弟子と師匠②

「アルフィ様、お聞きしたい事があるのですが」


「なに?」


「実は...」


 私は自分の中で17年分の記憶しかない事を彼女に告げる。


【大帝】の死から百年後に私は生まれた筈です、なのに実際には更に数百年の時が流れていました。


 いくらエルフが長寿だとはいえ、流石に数百年の時をダラダラと過ごした記憶はありません。


「何か変じゃないですか? 私が覚えているのはアルフィ様が処刑されたところで途切れているのですが...」


「...」


 その事について彼女は説明してくれる。


「実はね...、貴女には私が記憶操作の魔法をかけて置いたの」


「...えっ?」


 その言葉に私は驚いてしまいました。


「いつですか?」


「処刑される寸前、私はレイナの記憶にある私との思い出の全てを掻き消そうとしたの」


 意外な事実に私は「なぜそんな事を?」と聞いてしまう。


「レイナが私の死を自分の所為だと思ってしまわない為によ、でも貴女はそれに抗って強い魔力を自身に当てたの、その結果として精神と体が曖昧になって記憶がバラバラになってしまったのね、何年経ったのか分からないほどに貴女の記憶は飛んでしまっていたのだと思うわ」


 そう言われると徐々に思い出すあの時の言葉。


『私の事はもう忘れなさい』


 小さく囁かれたあの言葉に私が強く反発した結果、私は精神が壊れてしまい何年もの間の記憶を失っているというのです。


 しかし、そう言われると合点が行くこともありました。


 私が目覚めた時の王国は既に廃墟となっており誰もいませんでした。


 私にとっては一瞬の事でも、王国にとっては数百年の時が経過したというのであればあの荒廃っぷりにも納得がいきます。


(でもそうなると、私は一体何歳なのでしょう? 少なくとも300歳は超えていそうですが...、うう〜ん?)


 師匠の目の前で自分の年齢に悩んでしまう私なのでした。

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