第16話 撤退

「一度撤退する」


 そう呟く勇者を見て私は驚いたのだが、勇者パーティ全員がその指示に同意していた。


「あまりにも敵の能力が強力すぎる!! これは俺たち4人だけでは対処できない! 王都に置いてきた仲間達と共に戦わなくては勝利は得られない!」


 その言葉を聞いたマーカイルは不敵に笑う。


「この状況から逃げられるとでも思っているのか?」


 瞬時に大量の人形を私達の周りに集めて逃げ場を封じる。


 村にも戦える若者が何人かいた筈なのだが、気がつけば勇者パーティ以外に人影は見えなかった。


 つまり、この村の人間は全て人形に変えられてしまったという事でもある。


 その答えに辿り着くと自分の無力さに腹が立ってくるのだが、せめてサラだけでも守り通そうとしっかり抱きしめた。


 サラの命が助かると言うのであれば、撤退にも意味はある。


 たとえこの場で奴を倒せなかったとしても、いつかきっとこの人達が倒してくれるので一般市民的に言えば『撤退』と言う言葉は生き残る為の道標なのかもしれない。


「テクア!! 【移動呪文】の準備を!! 他の者はテクアを全力で守れ!!」


 勇者の言葉と共に魔術師を守る攻防線が繰り広げられるのでした。

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