第244話 若頭の恋⑥

 〜1週間後〜


 マサツグは準備の為に1週間待って欲しいと私に言ってきました。


 エリーゼの件があるので、正直言って早く遠くに逃げたいのだけど、レイナの返事に答えようとしている若頭の行動を無下にはしたくない。


 なのでこの1週間は適当な仕事を回してお金と経験値を稼ぎながら、ついでにエリーゼに剣の指導もしてあげました。


 私は剣士ではないですが、何故か刀の扱い方ならなんとなくわかったので彼女もメキメキと力量を上げてきています。


 まあ、今はその話は置いておいて、今から行われるであろう私と若頭の戦いの舞台を怖い人達が囲んでいました。


 どうやら若頭の家にある中庭で戦うらしいのだけど、肝心の若頭が見当たらない。


「きっとケロナお姉様が怖くて逃げたんですわ!」


 そうエリーゼは笑っていましたが、私は違うと確信しています。


 あの男があれだけ大見え切って逃げだすはずがありません。


「エリーゼ...、あんまり男の覚悟を貶すものじゃないよ」


 私の言葉に彼女は訂正する。


「あっ...、はいっ! 申し訳ありません! そんな事があるはずないですわね!」


 私がしばらく待っていると、1週間ぶりに彼は姿を表す。


「待たせたな...、ちょっと感を取り戻すのに手間取った」


 そう言いながら現れたのは、1週間前の弱々しい男ではなく、しっかりと鍛えられた肉体を持つ侍の姿があるのでした。

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