第297話 洞窟③

 パチパチ...。


 焚火の燃える音を聞きながら体を寄せ合う私達...。


 毛布も何もないこの場所で体を温めるには人肌が1番良いとプラルが言い出した時にはびっくりしましたが、実際効果はありました。


(プラルの体って小さいけどちゃんとあったかいんだ...)


 やはり人肌は偉大だと思います。


 これがケロナお姉様だったなら昇天しかねない程の幸福感を得られていたと思うと少し残念ですが、今は体を温めて風邪をひかない事が1番重要でしょう。


 仕方がないので体を密着させて少しでも体温の確保に勤しむ私達...。


(ああ...やっぱり暖かい...)


 私はこの暖かさに心を奪われてしまい、思わずあらぬ方向へと手を伸ばしてしまう。


「ちょっ! エリーゼさん! そこは流石に!」


「...へっ?」


 彼女がそう言ってくれたので思わず手の動きを止めました。


 知らない内に手が彼女の胸を揉みしだいていたのです。


 まるで生まれたばかりの無垢な赤子と同じで、無意識の内に私の体は母親の母性的な物を求めていたのかも知れません。


「はっ! ああっ! すみません!」


 思わず彼女に謝る私は恥ずかしさに顔を真っ赤にします。


(私はなんて事を!! ちょっとだけ人肌が恋しくなっただけだと言うのに、出会って間もないプラルにこんな事をするなんて...、どうかしてますわ!)


 私がそう思っていると、彼女は静かに笑ってこう言いました。


「流石にそう言う所を触られるのはアレですけど、単純に温め合うだけなら歓迎ですよ」


「そうですわね...」


 そう言いながら私より小さな裸体を近づけてくる彼女を私は受け入れるのでした。


 これは仕方ない事なのだと自分に言い聞かせながら、人肌の暖かさを堪能するのでした。

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