第658話 ミルシュ④

 どうやらミルシュの旅用の服を作るのに3日ほどかかるようなので、その間にミカとの戦闘訓練を進める事にしました。


 ミルシュの装備品を新調している最中にもミカとの戦闘訓練は欠かせません。


 幸いな事にこの村は森に囲まれた辺鄙な場所に存在しているので戦闘訓練にはもってこいの環境でした。


 少し村から離れた場所にある、広場のような場所で私とミカはいつもの戦闘訓練を行います。


「今日こそ師匠から一本取ってやるからね!」


 やる気満々なミカとの戦闘はこちらも有意義なので問題ない。


 いつも通り愚直に突き進んでくるだけかと思いきや、今回は少々考えているところが見られるのもグッドです。


(...ほう)


 妙に低姿勢を維持しながら攻撃してくるなと思っていると、いきなり私ではなく地面を殴りつけて私の足場を浮かせたのでした。


 あからさまに何かを狙っている素振りをしていたので簡単に対応できますが、これをなんの前触れもなく戦闘の途中でやられてしまえば対処に困ると思います。


「よし! 浮いた!」


 と彼女は言っていますが私は慌てません。


 たとえ空中に浮く不安定な足場で彼女と戦ったとしても負けるはずがないからです。


 私が悠々と彼女を待ち構えていると、今度は土魔法を扱い更に私の移動できる空間を狭めてきました。


 どんどん崩れていく足場の中、私が取った行動は勿論地上に降りる事ですが...。


「かかった!」


 彼女は小さくなった足場から落ちてくる私を地上で待ち構えています。


 そして拳に魔力を乗せて思いっきり殴りつける準備をしていますので、私が普通の相手ならばここでジ・エンドでしょう。


 でも残念でしたね。


 私は普通じゃないのです。


 彼女が私の落下に合わせて位置調整し抜群のタイミング飛び上がった瞬間を狙って水の床を張り、一瞬だけ彼女のタイミングずらしました。


「なっ!!」


 驚く彼女が空中で空振りしたのでその後に彼女の頭を踏んづけてそのまま地上の叩き落としてやります。


 〜特訓終了〜


「くそ〜...、この作戦もダメだったか〜...」


 そう呟くミカに私はアドバイスを送るのでした。

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