第749話 ぼやつく...

「...ここは?」


 私の意識が戻った時に見た光景とは白と青の空間でした。


 空には白い雲と晴天が広がっておりどこか気持ちよさすら感じる。


 チャプチャプと言う足元の音と共にゆっくりと足を前へと運ぶ。


 足元に浸かり続ける水の音にどこか安心感を得ながら歩いていると...。


「いたっ!! ママだ!!」


 聴き慣れた声の方に振り返ってみると、そこにはミルシュが立っていました。


「ミルシュ? 何でこんな所に?」


 ミルシュが近づいてきたときに思い出すのはアポロに騙された自分のことです。


「待って! ミルシュ! 私に近づかないで!!」


 いきなり大声でそう叫んだせいか、彼女は驚いていました。


「ママ?」


「とにかく私に近づかないで!」


 そう叫ぶには理由があります。


 今の私の肉体はきっと【次元龍】の支配下にあります。


 ぼやつく記憶の中で最後に思い出すのはいつもアポロに騙された瞬間の記憶。


 きっと私の体は...もう...。


 そう思うと悔しい限りですがどうしよもない。


 私1人の力では【次元龍】は止められないのですから...。


 そうこうしていると晴天だったはずの辺り一面が白い霧に囲まれていきました。


「...何?」


 明らかな違和感を覚えていると...。


「...えっ?」


 その霧の中から現れたのは過去の強敵でした。


「なんで...がここにいるんだ!?」


 そう...、私の目の前に現れたのはその昔戦っていた宿敵のギサラでした。


 白髪の髪を揺らしながら各種モンスター達が混ぜ合わされ人間の形を保っている歪な肉体は間違いなく全盛期の力を発現した時の物である。


 しかし、この世界に彼がいるはずがありません!!


 なぜなら、この世界と私の元いた世界は全くの別物。


 私のいた世界の住人であるギサラがここにいるはずがないのです。


 しかも、様子がおかしい。


 彼とは既に和解した後だと言うのに、姿のままで現れているのだ。


 彼は優秀なモンスターテイマーであったが、それと同時に世界に災いを振り撒く者となり得たのだ。


 それを止める為に私達【極限リミテッド】能力所有者6人が手を組んだ程の相手なのだ。


 彼は元人間だと言うのに、その体に多種多様なモンスターの力を保有している。


 そう、モンスターテイマーともあろう者がモンスターを育てるのではなく自分を強化する為の素材として魔物達を扱っていたのだ。


 そんな暴挙を繰り返す彼に我らが魔王アリカが黙ってはいなかった。


 5人の王達が連合軍を募り最強の布陣で挑み辛くも勝利を収めれる相手が今全盛期の力で目の前に存在している事に驚きを隠せないでいた。


(嘘でしょ...!)


 私は勢いよく後ろを向いてミルシュに声をかける!!


「ミルシュ!! 逃げ..!!!!


 私の声が届き切る前にカズラはミルシュの首をへし折っていました。

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