第139話 ワイバーンの住む山⑤

「ケロナ姉ちゃん!! サラの魔法見ててくれた!?」


 はしゃぎながら私の方に手を振るサラの姿が見える。


「凄いでしょ!! レイナさんに教えて貰ったんだ!」


 えへへ〜と良い笑みを浮かべる妹になんて声をかけていいのか分からなくなった。


「あっ...と、えっ...と」


 いつもなら言葉なんて考える前に出て来るはずなのに、今回は何故か口にできない。


「ケロナお姉ちゃん?」


 キョトンとした顔でそう呟く彼女に先に声をかけたのはレイナだった。


「うんうん! 合格ですよサラ」


「本当!?」


「はい、一人で不足の事態にも対応できていましたし、何より【強電撃ギガサンダー】の威力が合格点を超えて花丸を差し上げたいくらいでしたよ」


「サラ凄かった!?」


 目をキラキラさせながらそう叫ぶ妹に彼女はこう声をかける。


「はい、とっても凄かったです、これならどこで【魔女】を名乗っても恥ずかしくないですよ」


「えへへ〜///」


 照れながら頭をかく妹は次に私の方を見てきた。


「ケロナ姉ちゃんもサラの事を見てたよね!? どうだった!? サラ格好よかった!?」


 私はどうにか口を動かして「うん、凄かったよ」とだけ呟く。


「やっぱり私も成長してるんだね! 今回ワイバーンと戦ってよく分かった! 今度からはもっとお姉ちゃん達の役に立てると思うからどんどん仕事していこっ!」


 私はこの時のサラに対して、嬉しくも少し寂しくなるような気分を感じているのでした。

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