第510話 赤毛の少女

 私が外に出てみると戦火はどんどん燃え広がり、ついに町全土が焼失しかねない程にまで拡大していました。


(ここまで火が回ってくるのも時間の問題ね...)


 私はそう思いながらもカトラの首筋に杖を突きつけてこう呟きました。


「この神社の敷地内にその素晴らしい鍛冶屋がいると言うことは分かりました、早く案内してください」


「...分かってるわよ」


 彼女に道案内させている間に仲間達から心配そうな視線を浴びせられましたが、私はいたって冷静です。


 襲いかかってくる【ガライ教徒】を本物の【イーグル団】と仲間達が迎撃してくれるのでどうにでもなりますからね。


 彼女に連れられて神社の奥手側にある古屋に入りました。


「ここって...、ただの古屋じゃないの?」


「...違いますよ、ここをこうすれば...」


 彼女が部屋の奥にあるタンスを3度叩くとタンスが真上に上がって隠し階段が現れました!


(こう言うカラクリを考えつくなんて...)


 私はそう思いながら彼女に道案内を続けさせました。


 少しずつ階段を降りていくと大きな広場に出てみると、絶句してしまう程に出来がいい武器や防具が大量に立てかけられていました。


「...戦争でも起こす気だったのですか?」


 私の問いにカトラは答えました。


「ええ、まあクラール様は戦争と言うよりは崇高な戦いの為の準備と言っていましたけどね」


「崇高な戦い?」


「分かってるでしょ? 我ら【大帝軍】と【次元龍】による長き戦い、そのための前準備と言うやつですよ、まあ、こうして【次元龍】の手先にしてやられるようでは【大帝】側に落ち度があったとしか言えませんけどね」


(その落ち度がカトラ、貴女と言う訳ね...)


私はそう思いながら彼女に鍛治職人の場所に連れて行ってもらうと、そこには槌を振るい鉄を打つ赤毛の少女の姿が見えてくるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る