第158話 【シュライン】のダンジョン④

 その後もダンジョン攻略を続ける私たちでしたが...。


 エリーゼがちゃんと私の言う事を聞くようになったので探索が凄く楽になりました。


「そっちに行ったよ! エリーゼ!」


「はいっ! ケロナお姉様!」


 私が瀕死にした魔物を彼女が狩って経験値を得ると言う方法でしばらくレベル上げをしていました。


 どのみち私はレベルが上がらないしこのくらいは譲ってやっても良い。


 レイナに聞いた限りではラストアタックが一番経験値を得られるらしいので、とどめは全てエリーゼに譲ってあげています。


 私達はエリーゼの為に魔物を瀕死にさせるのも仕事の一環だと思ってその行動をとっていました。


 でも、死にかけの魔物が一番恐ろしい事に変わりはない。


 エリーゼにはその死線を掻い潜って貰い、強くなって貰おうという魂胆だ。


 ダンジョンに入った時には綺麗だった剣と鎧はいつの間にか魔物の血と油で物凄く汚らしい物に変貌していたが、エリーゼはあまり気にしていない様子だった。


 寧ろ私達と一緒に冒険者として活動できているという実感が彼女のモチベーションとなっているようにさえ見える。


「やった! ケロナお姉様! また倒しましたよ!」


 血がべっとりとついた剣を振り上げて私に見せてくる度に注意をする。


「エリーゼ! 戦闘が終わったら血払いをしなさい!」


「はいっ!!」


 戦闘が終われば血払いをするという事を彼女に教え込む私。


 勿論血払いをしただけでは脂までは取れないのだが、血だけでも取り除いておかないと連戦になった時に切れ味が更に落ちてしまうのだ。


 彼女が血払いを終えた後に私の水魔法【重水】で綺麗に魔物由来の油脂を落とす。


 普通なら油の方が重いので水で洗うよりも布で拭き取った方がいいのだが、私がいる場合は別だ。


 油よりも重たい【重水】で油ごと綺麗に洗い流し、その後で剣を数回振る事で水滴を全て弾き飛ばせば刃の切れ味はより長持ちする事だろう。


 私の指導に一切の文句を言わずついてくる所を見ていると、しごきがいがあると思わずにはいられない。


(ふっ...、エリーゼも頑張りやだな...)


 と思わずにはいられない...。


「...あれっ?」


 私は思わず頭に手を置いた。


「あの子って誰だ?」


 名前も知らない娘の顔が浮かんでは消えていく...。


 そんな感覚が何度も私を襲う...。


 少し気分が悪くなったものの、今は彼女の指導に全力を注ごう。

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