第39話 稼ぎの成果
あれから1ヶ月。
私達は【城塞都市クレイトン】にて冒険者家業を営んでいた。
「ケロナ! そっちに行ったぞ!!」
「任せて!!」
今日も森の中にいる厄介なモンスターを狩りに来ていたのだが、すぐに終わりを迎える。
「終わったな」
「ああ、ケロナがいてくれるだけで1日に複数の依頼を受けても時間が余っちまう」
ディールの言う通り、私達は街道に潜む盗賊の撃退や森に住んでいる外来種や危険種の討伐、挙句に【城塞都市クレイトン】にある未攻略ダンジョンの攻略組になってしまうなどの戦績を上げていた。
今ではギルドで私達に白い目を向ける者はいなくなっている。
良くも悪くも冒険者業とは『実力の世界』なのだと自覚せずにはいられない。
たとえレベル1でも戦績を上げられるのであれば重宝されるし、逆にレベル99でも戦績を上げられないのであれば脳無しとみなされてしまうのだ。
「お姉ちゃん見てた〜!?」
今日の魔物を私達の方へと誘い込んだ裏の主役が姿を表す。
「見てたよ、森に引火しない程度の炎で野生のモンスターを私達の方に向かうようにしただなんてサラは凄いね」
私はサラの頭を撫でると彼女は「えへへ〜」と笑う。
実際この1ヶ月間の間に彼女は驚異的な成長を遂げた。
つい1ヶ月前までは魔導のなんたるかを何も理解していなかった割にはよく出来ている方だと思う。
魔術師の下級魔法は全て独学でマスターし、時々職業を僧侶に変えてマーヤに回復魔法の基礎を教えて貰っている。
まだまだ暴発はするものの、マーヤ曰くもう少し地盤を固められれば僧侶としてもやっていけるだけの才能はあるそうだ。
最近では魔術師の中級魔法にまで手を伸ばし始め【城塞都市クレイトン】の中では幼いわりによくできた魔術師がいるらしいと噂になっているほどだ。
かく言う私も自慢できる程ではないがサーシャに短剣の投げ方を教えて貰い、戦闘では魔法でできた水の短剣をいくつも出現させて相手に命中させる事が安定して出来る様になっていた。
私達は
私達とディール達の関係性は、お互いに得しかない良質な関係と言えるだろう。
剣を地面に突き刺しながら私の方を見てくるディールはこう呟いた。
「本当にお前さん達には頭が上がらないぜ、ケロナがいてくれるだけで稼ぎの速度が倍速になっちまうし質も上がる、これからもずっと俺達とパーティを組んで欲しいところだが...」
彼の表情が少しだけ暗くなり、森の中だというのに辺りを気にする素振りを見せる。
そして静かに私の耳元でこう囁くのだった。
「この町に長居する気はないんだろう?」
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