第343話 古塔

「今の声は...なんですの!?」


 奴の威嚇行為に怖気付くエリーゼ。


「凄い声だったね! ドラゴンさんも私達の到着に気がついたのかな?」


 声を聞いていてもサラはあっけらかんとしているが、その精神はとても穏やかなままでした。


 恐らくですが【聖女】の職業補正が発動しているのでしょう。


 どんな時でも冷静に状況の判断をしないといけない【聖女】には【回復魔力】と【精神力】のパラメータにとんでもない職業補正が付くのです。


 普段ならケロナがこう言う場面で彼女に声をかけるのですが、今はいないので震えてるエリーゼに声をかけたのはプラルでした。


「きっと大丈夫ですよ、さあ行きましょう」


「プラル...」


 プラルは私たちの中で1番背こそ低いものの、1番の年配者でしっかり者だと思います。


 自分より小さい者に「大丈夫」だと言われて気を取り直すエリーゼ。


「そ...そうですわね! 私がどうかしてましたわ! ありがとうございます」


「どういたしまして」


 2人のやりとりを見ていると少し和やかな気分になるが、今から強敵との戦いが待っていると思うと気を引き締めなくてはなりません。


 少しずつ足場の悪い古い塔の中を上がっていくと、ついに奴のいる頂上階に到達するのでした。

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