第662話 ミルシュ⑧

 まず先制したのはミルシュだった!


 素早い動きでミカの反応速度を上回り噛みつき攻撃を繰り出したのですが...。


「硬い! ミカお姉ちゃんの肩硬すぎ!!」


 そう、ミカは全身を硬質化して反応はできていないなりに回答札を用意していたのでした。


「師匠との戦いを見ていてミルシュも持ち味がスピードだと分かっていたからね、悪いけどこれでミルシュのスピードに目が慣れるまで耐久させてもらうよ!」


 そこから先はミカの圧勝でした。


 ミルシュの動きに徐々に目を慣れさせた彼女は抜群のタイミングで【土魔法】をミルシュの足元に出現させてよろけさせたのです。


 よろけた先がちょうど自分の攻撃範囲内に収まるように微調整されたその動きは、まさに完璧で美しい配置となっていました。


 してやられてしまったミルシュは面白くなさそうに頬をぷく〜っと膨らませているのが可愛い。


「もうっ! 一本も取れないからからミルシュつまんない!!」


 不貞腐れてしまう彼女に私はアドバイスをしておきます。


「それはミルシュがまだ戦闘慣れしてないからだよ、今のミルシュの戦略は直線的で真っ直ぐすぎるからね、せっかく【風魔法】と【雷魔法】が扱えるのならちょっと勉強して汎用性の高い簡単な魔法を覚えていこうか」


「うう...お勉強...」


 反応からみる限り、どうやらミルシュは勉強が苦手なようですね。


 でも魔物だったはずのミルシュがどこで勉強と言う単語を知ったのかはちょっと気になりますが、まあどうでもいいですね。


 とりあえず今日の特訓は終了。


 明日からはミカとミルシュの2人を特訓してあげないといけないので、新たな特訓メニューを模索する私なのでした。

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