第410話 決勝戦 ⑤

「うっ...」


 俺がケロナちゃんの腹パンで倒れると会場は沈黙に包まれていた。


 ここまで圧倒的な強さで勝ち上がってきた【勇者】パーティがここに来て惨敗してしまったからだろう。


 結果的に俺達は【ケロっと☆】のメンバーを誰一人として倒す事ができなかったのだから当然である。


「ここで完全決着!! 激闘を制したのは今大会のダークホース!! 【ケロっと☆】だぁ!!」


 普通なら盛り上がる所なのだが、何故か不気味な程に鎮まり返っているのがよく分かった。


(やっぱり皆【勇者】パーティが無様に負けた事がショックなんだろうな...)


 観客の目を見ていればわかる。


 の感情が露骨に現れた人間の汚い視線が俺達に注がれる。


 そして...。


「何が世界を救う勇者パーティだぁ!!」


「こんな女の子だらけのパーティに負けやがって!!!」


「税金泥棒が!! さっさと【勇者】を辞退しろ!!」


 などと言う罵倒が俺に注がれる...。


 しかしこれは当然のことなのだ。


【勇者】と言う肩書きにはそれ相応の物がかかっている。


 そう簡単に負けてはいけないのに、あろう事か女の子だけのチームに負けて今こうして体を地に伏してしまっているのだから仕方がない事なのだ。


「くそっ...」


 俺が悔しさ一杯の中で涙を流していると...。


「黙りなさい!!!!」


 と言うケロナちゃんの声が会場中響き渡るのでした。

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