第832話 『新たなる旅立ち』

 〜10年後〜


 ここはスラナ村。


 10年前に【大帝の眷属】により全滅した辺境の村だった場所だ。


 私は今日も【聖女】兼【魔女】として村の皆の為に働いていた。


 師匠であるレイナさんと一緒に薬草を作って販売したり、プラルと一緒に村復興の為にホビット族の移住を募集したりしました。


 勿論他の人種もどんどん集めていき、いつの間にかスラナ村はスラナ町となっていました。


 こんな辺境の村がここまで発展できたのには理由がある。


 第一に私の【回復魔法】だ。


 高レベルの【聖女】ある私は殆どの呪いを解くことができる。


 それ以外にも猛毒に侵された者を助けることもできたし、即死でなければ重症でも治すことができるからです。


 私の回復魔法を目当てに人が集まりそれを第二の理由であるレイナさんの薬が目に止まる事だろう。


 レイナさんの薬の効能は完璧であり、そこらの回復魔法よりも質の良い回復効率を誇っている。


 ただ多少値段が張るのだけど、それは村の復興資金に当てています。


 そして最後はポニーの武具だろう。


 彼女の武具の出来は言わずもがな世界最高峰だ。


 私の回復魔法やレイナさんの薬草を買い終えた客は次にポニーの武具店を見てその性能に目を疑う事だろう。


 今では貴重な財源となった彼女の武具は時々盗っ人に狙われるのだが、ことごとくプラルが撲滅してくれているので安心だ。


 それに私とレイナさんとポニーで一緒に魔道具を作ったりしていたせいか、夜でも魔法の光で街灯のつく立派な町になって行ったのだ。


 一時期は移住を試みる者達で溢れかえってるせいで凄く困っていたのを覚えている。


 まあ、今ではそれも落ち着いて来ているのでかなり楽にはなって来ていた。


 一通りの書類を書き終えた私は筆を置いて一息ついた。


「んん〜!!」


 背筋を伸ばしているとレイナさんが扉を開いて来た。


「サラ町長、頼まれていた薬ができましたよ」


「ありがとうレイナさん、でもその町長って言うのはやめてくれないかな? 一番スラナ村の古参である私が町長やるのは良いんだけどやっぱりなれなくてさ〜」


「そうは言ってもあれから10年間立派に町長やれてるじゃないですか〜、今ではもうサラが若いからと言う理由だけで町長の座から引きずり下ろそうとしてくる奴もいなくなったですしね」


 私はその言葉にふっと笑う。


「まあ、最初は本当に大変でしたね、今では良い思い出ですけど」


 私の反応に彼女も微笑んだ。


 2人して笑っていると彼女はこんな事を言い出した。


「ところで...、たまには休暇を取って私と旅行に行きませんか?」


「レイナさんと? どこに行くんですか?」


 私の言葉に彼女は答える。


「私達のような魔術師の聖域...、女神クティルによって【】ですよ!」


【魔導王国クティル】とは私達魔術師にとって一度は言ってみたい魔法使い達の聖域のような大地です。



「【魔導王国クティル】...!」


 その言葉に私は久しぶりに胸を躍らせた。


「さあ、ギルドで職業を【魔女】に変えたら早速出かけましょう♪」


「でも...仕事が...」


「そんな物はちゃんと手配していますよ、だから安心して旅をしましょう!」


 師匠の粋な計らいに私は笑みをこぼした。


「レイナさん」


「んっ?」


「ありがとう」


「...どういたしまして」


 私は早速最寄りのギルドで職業を【魔女】に戻すと久々の【箒】魔法を扱う。


 久しぶりだというのにまるで昨日までずっと【箒】魔法を扱っていたような感覚だ。


「問題は無さそうですね、では早速海を超えましょうか」


「...久しぶりの旅だね」


「ええ、ケロナがいないのは残念ですが今の私達なら大丈夫でしょう、では出かけましょうか」


「ケロナお姉ちゃん...か」


 私は記憶の中に残るお姉ちゃんとの思い出を全て振り返りながら箒に跨り海の上を駆ける。


 太陽に照らされて宝石の様に輝く海面を見ながら心地の良い風に晒される絶好の旅日和。


(私...ケロナお姉ちゃんとの思い出は絶対に忘れないよ!)


 そう自分に言い聞かせながら新たなる旅路に胸を高鳴らせているのでした。


 〜第8章『聖なる法律の聖典編ホーリールールブック』〜


 完


next 第9章『幼女退行編(オギャリティバブバブ)』に続く!

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