第367話 玩具箱の家⑬

「ふぅ...」


 紅茶を一杯飲み干したメイアは私達にお茶を飲むように進めてきました。


「さぁ...、早く飲んで」


 ニマニマとした笑いは年相応の筈なのに...、何故か悪い魔法使いのような醜悪さが残っているように見えます。


 どれだけ彼女に進められても誰もお茶に手をつけないでいると...。


「飲まないの? ケロナお姉ちゃんがどうなっても良いのかしら?」


 その言葉を聞いた瞬間に私は意を決しました。


「頂くわ...」


 私の言葉に皆が止めに入る。


「「「レイナさん」」」


 皆が私の名前を呼びましたが私は落ち着いてこう返します。


「大丈夫...、私に何かあったらサラ...、貴女が皆を先導しなさい...」


 私はそれだけ呟くとゴクリと紅茶に手をつけました。


 皆が息を飲んで見守る中、私はその紅茶の味に感激してしまう。


(うわっ...、なんですかこの紅茶は! とても美味しいですね...)


 ほんのり甘くて心地の良い舌触りがいい感じのアクセントになっているような気がします。


「ふぅ...」


 と一息吐く私を皆が真剣に見つめていますが、これではただ単に美味しい紅茶をご馳走してくれただけですね...。


「大丈夫ですか?」


 とプラルが聞いてきたので「大丈夫よ」とだけ返しました。


 紅茶を飲んだ私を見てメイアが「ようやく飲んでくれた」と呟きながら次の言葉を並べていきます。


「メイアね、お友達が欲しいの...、人形のお友達もいいんだけど...、やっぱり血の通った生き物とお友達になりたいの...」


 そう呟く彼女の瞳には悪意は見られない。


 もしかして彼女に悪意があると私が思っているからこそ彼女の笑みの全てが悪意に満ち溢れているように見えてしまっているのだろうか?


 そう思い始めた私は彼女と交渉をしてみる事にするのでした。

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