第487話 【次元龍】VS【黒牛】②

 両腕に傷を負ったクラールでしたが、何故か笑っていました。


『何がおかしいの?』


「クフフ...、おかしいのではない嬉しいのだ...、いくら相手が汚れた存在である【次元龍】とは言えども、こうして強者と渡り合う事こそ【大帝の眷属我ら】の本懐なのだからな...」


『なるほどね...、やっぱり貴方達は危険な存在だ、私が責任を持って消滅させてあげましょう』


「できるのか? お前が? 3等分の1の力しか持たないお前如きが? 【大帝の眷属我ら】全員を相手にして生き残れる訳がないだろう? 事実貴様はのだからな...」


 それを言われると少しだけ怯んでしまいましたが、それでも...。


?』


 そう答える事で彼の動揺を誘いました。


「からかっているのか? 今のお前に以前程の圧力は感じない、事実今こうしてワシと戦っているのが精一杯ではないのが何よりの証拠なのではないか? 以前のお前ならばワシなんぞ一捻りじゃったからな...」


『...』


「...」


 私と彼の間に奇妙な間が生まれしばらくの間沈黙が訪れた。


 お互いの言葉の意味を紐解きながら戦闘に活かすための間だ。


『そう言えばなぜお前は私が全盛期の3分の1しか力がないと分かっていた? あの現場には【大帝の眷属貴様ら】はいなかった筈だが?』


 そう...、私が解体されたあの日、あの場所はこいつらの目の届く場所ではありませんでした。


 その筈なのになぜ私の力が3等分にされた事をこいつらは分かっていたのでしょうか?。


「知りたいか? ならば力を示して貰おうか、【大帝の眷属我ら】は【大帝】様の名を受けて動いている...、貴様が【大帝】様以上の力を見せつけて新たな【大帝】となったのならば【大帝の眷属我ら】はお前に忠義を尽くそう...」


『...やっぱりそうなるのね、自分の意思よりも【大帝】の意思を優先する貴方達って本当に愚かな種族だと思うわ』


「自分の意思で自由奔放と暮らしていたお前には【忠義を尽くす】という意味さえ分からないのだろうな...」


『ええ、分かりたくも無いわね』


 その言葉と共に私と彼の殺し合いは再び始まってしまうのでした。

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