第497話 2体目の【次元龍】

「かっ...は...?」


 私はその場に胸を押さえながら膝をつきました。


(く...苦しい...)


 ドス黒い瘴気が私の中に入ってくる感覚はとても気持ち悪い...。


 ようやく落ち着いたかと思うと、私の中にもう一つの反応がありました。


『ミストレア、君が僕を救い出してくれたのか?』


『ええ、我ら【次元龍】のパーツの内2つがここに揃ったと言うわけね、アズム』


 心の中で2人で会話しているのが私にまで聞こえてくるので正直うざい。


「はっ? 何? 私の中にもう1人いる?」


 そう私が呟いた瞬間に彼は答えた。


『僕はアズム、ミストが世話になったね』


『別に世話にはなってないわ』


「いやいや、ずっと私の体内にいたんだから世話になってるでしょ」


『ふんっ』


 今ミストにそっぽをむかれた気がするが、まあいいだろう。


「っていうか【次元龍】にも名前があったんだね」


『ああ、僕はアズム、そしてこっちはミスト』


「今度の【次元龍】は意外にまともなのね」


『僕がまとも...ね、まあ君がそう思うんならそうなんだろう』


 妙に歯切りが悪いのは何故だろうか?


 しかし、その点を踏まえてもこうして彼らと話していると、【次元龍】は絵本の話に出てくるような血も涙も無く話し合いもできないと言われていたのが嘘の様に思えてくる。


 私はこうやって彼らと話しているし、ミストに関しては戦いまで手伝ってくれているのだからね。


 此度の戦いも生き残る事ができたのは、彼女がいてくれたお陰とも言えるでしょう。


 私は大きくため息を吐きながらも、2冊目の【聖典】を破壊できた事に深く安堵しているのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る