第596話 【風龍ルディラ=マルクス】⑥

 ミカのキックを顔にもらった【風龍ルディラ=マルクス】は吹き飛ばされて山にぶつかるとようやく動きを止めた。


【風龍ルディラ=マルクス】を倒したミカは私の方を見て手を振ってくる。


「師匠〜!! どうだった〜!!?」


 大声で叫ぶ彼女に私は言いました。


「悪くなかったよ」


「本当!? だったら師匠を倒せる日も近いかな!?」


「それはまだまだ無理」


「ぐっ...! まあわかってたけどさぁ...、いつか絶対に一本とってあげるからね!」


 師匠である私にも遠慮なく指を突きつけてくる彼女の無礼な行動は極まっているので、次はこの失礼な部分を躾けないといけませんね。


 それも師匠である私の勤め...と言うかそんな所ですから。


【風龍ルディラ=マルクス】が動かなくなったのを確認した私は水の壁を散布させ、【王国軍】の皆さんを呼びました。


 ようやく現場に着いた【王国軍】の人達は死骸となっている【風龍ルディラ=マルクス】を見て驚いていました。


「まさか...、本当に2人で【風龍ルディラ=マルクス】を倒したのですか?」


 今回の遠征のリーダー的な人にそう言われた私は答えました。


「いや、私は直接手を出していないので実質ミカ1人の活躍ですね」


 その言葉に彼は信じられないと言う表情をしていましたが、【風龍ルディラ=マルクス】の死骸があるので信じるしかないでしょう。


 彼としばらく話をしていたら「この後【フィルア王国】へと来てもらえませんか? 御2人をフィルア王に紹介したいのです」と言われましたが、私は断りました。


「いや、やめておく」


「何故ですか? あなた方程の実力があれば王の護衛隊長にさえなれるはず! きっと【風龍ルディラ=マルクス】を倒したあなた方の実力を見れば王も高待遇であなた方を迎え入れてくれる事でしょう!」


 そう言ってなかなか引いてくれない彼に私は言いました。


「悪いけど、私が仕える人はもう決まっているんですよ、今更誰かに鞍替えする気はありません!」


 私が呟くと彼は身を引きました。


「なるほど、そう言う事でしたか...、あなた方を仕えさせている人はさぞ高名な貴族か王族なのでしょうね...」


 などと勝手に言っているが、私の仕えている人というのはピンク髪の幼女であると言う事は伏せておこうと思う私なのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る