第739話 そんな...
「そんな...、ではケロナお姉様は私に父様や母様を見殺しにしろと言うのですか?」
「...」
そう言われると答えに困る。
我はこの子達を送り届けた後で【大帝】との決戦があるのだ。
次元を渡るのは息をするかのように容易いと言った我ではあるが、これだけの人数を次元の狭間に落とさないように安全な世界へと渡るのにはそれ相応の魔力を消耗してしまうことは明白である。
しばらく考えた後に我はこう呟いた。
「残念だが...」
「そんな!!!」
迫真の声で我にそう叫ぶエリーゼの声が妙に痛いのはきっとケロナの精神と我の精神が今は繋がっているからだろう。
彼女と繋がってしまった結果、我の考えはケロナの物と統合され、最初はこうして救う気すらなかったこいつらだけは救おうと行動してしまっているのだ。
我ながら呆れるのだが、今の心の状態ではこいつらの事が気になって全力を出せないだろう。
【大帝】との戦いになるのであれば、この世界を【次元崩壊】させてしまっても良いと本気で考えていたのに、こいつらが生きていると思うだけで全力を出せなくなってしまうのだ。
無論全力を出せないのであれば我は【大帝】には勝てないだろう。
あいつは手加減をして倒せるような相手ではないのだから...。
我の言葉に激しく動揺しているエリーゼを見てレイナがこう呟いた。
「ケロナ...、もう一度皆でよく考えてみませんか? 私達にとってこの世界は生まれ故郷ですから...」
魔女の言葉に我はただ無言で話し合いに応じるのでした。
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